Monday, August 17, 2020

ヘイト・クライム禁止法(178)リトアニア

 

リトアニアがCERDに提出した報告書(CERD/C/LTU/9-10. 23 May 2018

憲法第29条は、彼又は彼女の性別、人種、国籍、言語、出身、社会的地位、宗教、信仰又は意見に基づいて、権利をいかなる方法でも制限し、特権を付与してはならないとする。2011~19年の非差別促進行動プランを作成した。

ヘイト・スピーチと憎悪煽動は刑法第170条2項、同条3項で犯罪とされている。刑法第170条2項は、年齢、性別、性的志向、障害、人種、国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰又は見解に基づき、人の集団又は集団に属する個人に対して、公然と嘲笑、侮辱、憎悪を助長、又は差別を煽動した者の刑事責任を定める。刑法第170条3項は、年齢、性別、性的志向、障害、人種、国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰又は見解に基づき、人の集団又は集団に属する個人に対して公然と暴力又は物理的な暴力的取り扱いを煽動した者、若しくはこれらの活動を財政支援その他の支援をした者の刑事責任を定める。刑法第170条の1は、年齢、性別、性的志向、障害、人種、国籍、言語、世系、社会的地位、宗教、信仰又は見解に基づき、当該集団を創設した者、又はそれを扇動し、若しくはその集団又は組織に参加した者、財政その他の支援をした者の刑事責任を定める。

検察庁情報システムには上記刑法規定に関する予審捜査に関する十分な統計データがない。2014年1月1日から2017年9月30日までの間、刑法第170条2項について194件の予審捜査、刑法第170条3項について94件の予審捜査、その両条項について35件の予審捜査が行われた。予審捜査は1件の中に複数の事案が含まれる。

刑法第170条2項、同条3項に基づいて行われた43件の予審捜査の結果、97事案が犯罪の要素がないため終結、2事案が証拠不十分で終結、23事案が被疑者保釈、76事案が継続中である。有罪判決を受けた人員は70名である。

憎悪煽動と闘う長期戦略として、FacebookGoogleYoutubeMicrosoft

Twitter等の企業と協議し、オンライン憎悪煽動と闘う行動綱領を作成し、憎悪煽動を報告し、当該書き込みを削除する効果的で迅速な制度づくりを進めている。

2017年5月23日、司法省はオンライン・メディア、Facebook及びGoogle、市民社会と協力して討論会を開催した。

2014年、ジャーナリスト倫理綱領事務局が、公的情報における憎悪表現と闘うため、NGOによる研修に積極的に参加した。2014年、リトアニア・ジャーナリスト連盟は、「ジャーナリストの倫理とメディア法」という研修を組織した。

刑法第169条は、国籍、人種、性別、出身、宗教、その他の手段への所属に基づく差別を犯罪とする。2009年6月16日の刑法改正により、外国人嫌悪、人種差別を刑罰加重事由とした。

裁判所の統計では、2014年1月1日から2017年第一四半期までの間、の終結事件は、刑法第169条が1件(14年)、1件(15年)、0件(16年)、0件(17年)、刑法170条が37件(14年)、22件(15年)、17件(16年)、5件(17年)、刑法第170条の1が0件(14~17年)である。このうち刑法第170条の5件が判決言渡しとなり、3件が有罪、1件が無罪、1件が刑事和解成立である。全事件のうち25件が国籍に基づく煽動事案である。

憲法は表現の自由、集会・結社の自由を保障している。しかし、国際自由権規約に従って、集会の自由は民主社会における必要に応じて制約しうる。集会法第5条は、公開集会における禁止事項を定める。憲法や法令に違反する行為の教唆や、ナチス・ドイツの旗、エンブレム、制服、その他のシンボルの使用、及びソ連社会主義の旗、エンブレム、制服、その他のシンボルの使用は禁止される。

CERDがリトアニアに出した勧告(CERD/C/LTU/CO/9-10.7 June 2019

ヘイト・スピーチ、憎悪煽動及びヘイト・クライムと闘うキャンペーンを強化し、マイノリティ、移住者に対する偏見と否定的感情に対処し、寛容と相互理解を促進すること。ジャーナリストの研修を強化し、ヘイト・スピーチやステレオタイプを回避するようにすること。ヘイト・クライム/スピーチを報告できるように、法律扶助や法的補償へのアクセスについて公衆の理解を深め、犯行者が適切に訴追、処罰されるよう確保すること。法執行官、検察官、裁判官に、ヘイト・クライム/スピーチの捜査と訴追、及び統計情報収集する能力を教化すること。政治家やインターネット等のヘイト・クライムや憎悪煽動事件の捜査に関する統計を収集すること。差別、ヘイト・クライム/スピーチ事件の動機ごとの統計を取ること。