チェコがCERDに提出した報告書(CERD/C/CZE/12-13. 31 August 2018)
前回報告書で詳しく報告したように、レイシスト・プロパガンダは刑法で処罰可能である。2014年の法改正で、人道に対する罪及び戦争犯罪を否定、疑問視、称賛及び正当化する犯罪の訴追する規定に、ジェノサイドを否定、疑問視、称賛及び正当化する犯罪の訴追が加わった。
すべての検察官は、人種的、国民的その他の憎悪に基づく犯罪を訴追する権限を有する。過激主義犯罪に関する国内および国際協力は、専門家チームが担っている。過激主義に関する年次報告書によって過激主義との闘いの基本姿勢が示されている。戦略目標は次の5つである。ヘイト・クライムとその予防、反過激主義研修、社会的紛争と憎悪の予防、警察及び司法当局の専門性の改善、犯罪被害者支援。人種的動機による犯罪は「犯罪予防戦略2016-2020」の主要対象である。
2015年に憲法裁判所が、人種憎悪現象についての政治家や公務員の訴追について一つの判断を下した。事案はロマの集団による結婚カップルに対する襲撃である。ある国会議員がフェイスブックで意見表明を行った。人々の集団に対する憎悪又は権利制約の煽動の罪で議員が訴追された。議員は憲法で保護された議員特権を主張した。憲法裁判所は免責の形式を3つの条件を設定することによって制限した。保護される言説は口頭、文書、画像その他の手段の情報または表現の伝達でなければならない。議会又はその機関において行われたものでなければならない。議会会期中に他の議員に対して向けられたものでなければならない。当該議員は第2と第3の条件を満たしていないので、当該議員には免責は認められない。
教育大臣はヘイト・スピーチや言葉による攻撃に公式に抗議した。首相は、サッカー・ファンの集団によるアフリカ出身男性に対する攻撃を非難した。当該サッカーチームも非難に加わった。2017年、人権大臣が人種主義的攻撃を批判する声明を出し、2つの影響力ある政党議長も同じ立場を表明した。
CERDがチェコに出した勧告(CERD/C/CZE/CO/12-13.
19 September 2019)
一般的勧告第35号、第7号を想起し、マイノリティ集団に対するヘイト・スピーチ及び排外主義言説をしっかり非難し、政治家や公務員による人種主義ヘイト・スピーチから距離を置き、捜査と訴追をすること。学校における公衆の意識啓発活動を強化し、マイノリティ集団の状況を理解できるようにし、偏見や烙印押しを減らすこと。ヘイト・スピーチを行ったメディアやジャーナリストの責任を問い、ヘイト・スピーチを禁止する法律について研修すること。移住について調査するジャーナリストを保護し、報復される恐怖を持たずに仕事ができるようにすること。
人種的動機による犯罪の被害者が直面する障壁を除去し、救済と無償の法律扶助を提供すること。人種的動機による犯罪が適切に捜査され、責任者が訴追・処罰されるようにすること。マイノリティ集団に属する者を警察や司法当局の職員に採用すること。警察官、検察官、裁判官その他の法執行官に人種的動機による犯罪ついて研修すること。人種的動機による犯罪について、被害者の性別、犯罪別、民族別の統計を報告すること。