Wednesday, August 03, 2022

政府による安倍元⾸相の国葬の決定は、⽇本国憲法に反する  ―憲法研究者による声明―

政府による安倍元相の国葬の決定は、本国憲法に反する

憲法研究者による声明

 

2022722、政府は閣議決定をもって、927)に東京都千代区の本武道館において、安倍元総理⼤⾂の葬儀を国葬という形式で執りうと発表し、遺族もそれを承諾した。岸⽥⾸相が葬儀委員を務め、これに掛かる経費は全て本年度の予備費から出するとしている。われわれは憲法学を専攻し研究する者として、この国葬がわれた場合には、それが単に法的根拠を持たないだけでなく、本国憲法に⼿続的にも実体的にも違反することになると危惧し、この国葬の実に反対する。 

明治憲法下では、「国葬令」(1926年公布)が存在し、皇族と「国家に偉功ある者」に対して国葬がわれてきた。国葬令の適は、正天皇の国葬に合わせることになった。天皇の思し召しによって、国葬が実施され、国は喪に服することを義務付けられた。国葬という形式は、本五六の時のように、何よりも明治憲法の軍国化を促す効をもたらしてきたが、この「国葬令」は戦後の本国憲法の施と同時に1947年に失効している。国葬令は、なによりも憲法14条の平等主義に反するものであり、憲法に規定された基本的権の保障に反するからである。戦後は吉茂元相の国葬があったが、これは「戦後復興に尽くした」との理由による例外的なものであった。佐藤栄作元相の時も、国葬が提案されたが、憲法の番である内閣法制局が認めなかったことにより、国葬案は実施されなかった。平正芳元相の時より、政府と⾃⺠党による合同葬の形式が慣的に続いてきた。 

い間封印されてきた国葬が、岸内閣によって以下の理由をもって実されようとしている。それは「憲政史上最になる88にわたり、内閣総理⼤⾂の重責を担った震災からの復興、本経済の再⽇⽶関係を基軸とした外交の展開等のきな実績を残した外国脳を含む関係社会からのい評価選挙中の蛮による急逝」と説明されている。しかし、この~三に評されるように、安倍内閣はそれほどに評価すべきことをってきたのであろうか。1の任期(第90代内閣総理⼤⾂)の時は、教育基本法の改悪と防衛庁の省への昇格を実したが、内閣スキャンダル⾃⾝の病気を理由にして退いた。さらに、期に及ぶ2の任期(第96~98代内閣総理⼤⾂)は、憲法に違反する法改正(組織犯罪法における共謀罪、安全保障関連法等)を繰り返しながら、「モリ・カケ・サクラ」とわれたよう銭疑惑を残した。そして再度、病気を理由に職務を放り出し、多くの疑惑に正から答えることなく、相の座を明け渡した。とくに財務省の記録を改ざんし、殺者をみ出すまでして事実を隠ぺいした安倍元相の疑惑はいが、もはや闇の中にある。他で、外交に多な功績を残したとあるが、これまでの懸念材料であった「領・基地・朝鮮半島問題」にきな進展はない。安倍内閣は憲法の改正を望んできたが、現実に憲法の核部分は徐々に削られてきたことになる。 

内閣は、この国葬を今度は内閣法制局の唆を受けて、内閣府設置法の4条にある「所掌事務」として形式的に実施しようとしている。国葬の実施は政府が主体となる国事為であるから明確な法的根拠を必要としている。ところが、法4333号は、「国の儀式並びに内閣のう儀式及び事に関する事務に関すること」を内閣府が関わりうることを定めた限りであって、国葬という実体を定めているわけではない。国葬の実施はいかなる場合になされるかという要件を定めた法規があることを前提としてでなければ、この法4333号の実施は不可能である。さらに、国の最機関である国会が関わる余地は、内閣府設置法からはなんらえてこない。ここに⼿続き上の明な違反があり、これは法治主義に違反することになる。しかし、形式だけを整えても、国葬は実体的に憲法に反する問題をもっている。 

内閣官房官の説明では、「国葬の当学校は休にはしない」とあるが、政府が実施しテレビ放映による映像が流れることによって、社会が受ける反応にはきな影響が起こりうる。国に時間を指定して哀悼の気持ちを求め、公的機関での半旗の推奨もありうる。現時点で、部科学⼤⾂が国公⽴⼤学に求めている「国旗掲揚」の政指導が、強く、広範囲で実施されるおそれがある。こうしたことは全て本国憲法19条が保障する「思想・良由」に抵触することになりかねない。この由は「内由」に当たり、個思考の核部分を保障するものであり、これへの制約は厳しく審査されなければならない。とくに、学校事として国葬への参加が強制されることのないように気を付けなければならない。場合によっては、憲法20条に保障された信教の由や21条に保障された表現の由を侵害することにもなりうる。こうした国葬は強制がなんらないとわれるが、⾃⼰の信念に反する国葬が実施されるという事実をもって、国の各がもつとしての在り、「個としての尊重」(憲法13条)への侵害がじるおそれがある。 

財政的には現在試算がされているが、これを財務⼤⾂は予備費から出するとしている。しかし、警備も徹底するとなればかなりな費を必要とするであろう。額の問題もあるが、問題は予備費の使われにある。本来は害、コロナ対応等の不測の事態にあてるべきであり、国会での審議を求めるのが筋であろう(憲法83条)。また、公費をすでに私となってしまった個死に振り向けることには、その妥当性がないといえるのではないだろうか(憲法89条)。宗教性を払しょくしてうとしているが、個の死に関係することであるから宗教儀式の環と受けめる国も多いはずである。これを国家がに代わって国費で実施することが異常なのであり、国が実施することに格別の政治的な効があると推定されてしまう(憲法20条3項、89条の政教分離原則)。もしも、国葬をもって死者を必要以上に美化し、それを国の記憶に残し、政治的効果を意図し、現政権の継続を願うものであれば、そのことこそ国家の為を厳格に制約しようとする、本国憲法の憲主義の構造に反することになるおそれがあると考えられる。          

以上 

 

賛同者 2022.8.3 15:00現在84

 

1.   浅野宜之⻄⼤学教授

2.   ⾜⽴英郎阪電気通信学名誉教授

3.   飯島滋明名古屋学院学教授

4.   秀作愛媛学教授

5.   川多加学教員

6.   村修専修学名誉教授

7.  

8.   稲正樹元国際基督教学教員

9.   植野妙実中央学名誉教授

10.          植松健命館学教授

11.          右崎正博獨協学名誉教授

12.          賢治早稲⽥⼤学名誉教授

13.          江原勝早稲⽥⼤学教授

14.          久保史郎命館学名誉教授

15.          津浩明治学法学部教授

16.          学教員

17.          奥野恒久⿓⾕⼤

18.          栗実児島学名誉教授

19.          沢隆東京慈恵会医科学教授

20.          野善康⼿⼤学名誉教授

21.          ⾦⼦学名誉教授

22.          上脇博之学院

23.          河上暁弘広島市⽴⼤学准教授

24.          川畑博昭愛知県⽴⼤学教員

25.          下智史⻄⼤学教授

26.          君島東彦命館学教授

27.          清末愛砂室蘭学院教授

28.          原志命館学教授

29.          倉持孝司⼭⼤学教授

30.          ⼩⽵拓殖学教授

31.          後藤光男早稲⽥⼤学名誉教授

32.          林武沖縄学客員教授

33.          林直樹姫路獨協学教員

34.          松浩命館学教授

35.          幡洋愛知県⽴⼤学名誉教授

36.          近藤真⾩⼤学名誉教授

37.          笹沼弘志静岡学教授

38.          斎藤 名古屋学教授

39.          百合恵泉学園学教員

40.          榊原秀訓⼭⼤学教授

41.          澤野義阪経済法科学特任教授

42.          雅彦本体育学教授

43.          菅原真⼭⼤学教授

44.          真澄⿓⾕⼤学名誉教授

45.          佐智美⻘⼭学院学教授

46.          作正博⻄⼤学教授

47.          橋利安広島修道学名誉教授

48.          橋洋愛知学院学名誉教授

49.          内俊広島修道学名誉教授

50.          森正孝⾩⼤学名誉教授

51.          島泰彦元上智学教授

52.          ⽥⼀命館

53.          哲之学院学教授

54.          常岡(乗本)せつフェリス学院学名誉教授

55.          内藤光博専修学教授

56.          中川律⽟⼤学准教授

57.          ⾥⾒阪電気通信学教授

58.          中島茂樹 命館学名誉教授

59.          中富公広島修道

60.          秀樹学院学名誉教授

61.          茂樹東海学教員

62.          成澤孝信州学教授

63.          成嶋隆新潟学名誉教授

64.          瓶由美元桜の聖短期学教授

65.          ⿓⾕⼤学教授

66.          根森健東亜学院教授

67.          波多江悟史愛知学院学法学部専任講師

68.          畑尻剛較法研究所客員研究所員

69.          藤野美都福島県医科学特任教授

70.          福嶋敏明学院学教授

71.          古野豊秋元・桐蔭横浜学教授

72.          前原清隆崎総合科学学教員

73.          松井幸夫学院学名誉教授

74.          松原幸恵⼭⼝⼤学准教授

75.          島朝穂早稲⽥⼤学教授

76.          宮地基明治学院学教授

77.          尚紀⻄⼤学教授

78.          ⿓⾕⼤学名誉教授

79.          ⾨⽥広島学教授

80.          内敏弘学名誉教授

81.          若尾典元佛教学教授

82.          吉隆学院学准教授

83.          渡辺治学名誉教授

84.          ⼾⼤学名誉教授