2014年を振り返って特徴づけるならば、グローバル・ファシズムの時代に、いくつもの矛盾と混乱に引き裂かれた日本を確認することができる。経済的に停滞・後退を重ねながら、「アベノミクス」というカンフル剤で「成長」に酩酊する日本。高齢化社会の現実を前に、クール・ジャパン、AKB、JK散歩など歪んだ「文化・芸能」に沸き立つ日本。ナショナリズム、排外主義、歴史修正主義を「暴発」させながら、他者に対してヘイト・スピーチをぶつけ、自らの品位をとことん下落させる社会。
個人的にはそれなりに充実した一年でもあった。3月までは勤務先からサバティカル(有給休暇)をもらっていたのでジュネーヴで過ごし国連人権理事会や人種差別撤廃委員会に参加して勉強できた。4月以後は週8コマの授業におわれたが、ヘイト・クライム/ヘイト・スピーチへの取り組み、日韓条約50周年へ向けての見直し、「慰安婦」問題での発言など、ここ数年の課題に向き合うことができた。8月には人種差別撤廃委員会のロビー活動に参加し、11月には数年前に手を付けながら中断していた植民地犯罪論の研究にも戻ることができた。加藤朗・木村朗・前田朗『闘う平和学』(三一書房)に加えて、共著で『いまこそ知りたい平和への権利』(合同出版)、『Q&A「慰安婦」・強制・性奴隷』(お茶の水書房)にかかわることができた。また、授業では「青春の造形」(アーティスト・デザイナーヘのインタヴュー)に加えて、「スイスの美術館」も楽しかった。20年通ったスイスで収集してきた資料を基にスイスの美術館、画家、作品を整理する作業である。
2015年には還暦を迎えるのでそろそろこれまでの研究を一段落させたい。まずはヘイト・スピーチ研究を一つにまとめたい。そして研究を次のステップに進め、人種差別禁止法制定に取り組みたい。長年懸案の死刑論もそろそろなんとかまとめたい。
2015年は第二次大戦終結70年なので、国連レベルでも欧州でもさまざまな取り組みが行われる。東アジアは、歴史修正主義者に乗っ取られた日本がますます無責任ぶりを発揮するかもしれない。2015年は日韓条約50年でもあり、「日韓つながり直しキャンペーン2015」の運動のメインの一年でもある。東アジアに平和の海をつくる課題は遠ざけられるばかりだが、諦めず努力を積み重ねたい。