Thursday, December 11, 2014

フロンティアに挑戦する国際人権法に学ぶ

阿部浩己『国際人権を生きる』(信山社、2014年)
この夏、著者は本書と、大著『国際法の人権化』の2冊を同時出版するという離れ業を演じてみせた。国際人権法の理論と実践の両面における第一人者であり、国際人権法学会理事長である著者の理論的生産力はまさに群を抜く。驚異的だ。
その特徴は、人権状況改善のために国際法を活用しつつ、国際法そのものの改善のために理論構築を重ね、「人権の国際化」と「国際法の人権化」の両輪をエネルギッシュに牽引しているところにある。『国際法の人権化』は専門研究書だが、本書は評論やエッセイをまとめたもので、比較的読みやすい。とはいえ、読みこなすのは大変だ。ジェンダーの視座、難民・無国籍・外国人、そしてグローバル化する世界の中での人権論――347頁にぎっしりと詰め込まれた叡智と理論の闘いは、日本を変え、世界を変えるための法実践である。著者は末尾で次のように述べている。
「国際人権保障の法的潮流もあって、私たちは、今や国際法と直接に結びついた時代を生きるようになっています。国際法は、文字通り、市民化され民衆化されるプロセスにあるといってよいでしょう。こうした躍動する国際法の現代的息吹を感じ取るにあたり、私の場合は、大学院生時代からNGOの活動にかかわり、実際に国際法の現場に近いところに身を置くことができたのが幸いだったように思います。<中略>

私の場合、NGOの活動に携わってきた最大の利点は、政策決定エリートの側ではなく、市民・民衆の眼差しに寄せて国際法をみつめられるようになったことではないかと思っています。国家や統治者の視点ではなく社会に生きる一人の人間の目から見た国際法の可能性や問題点を追及するほうがもともと私の性分にあっていたこともあります。そんな気持ちをもって国際法にかかわっていると、大学や学界の中だけではなかなかお目にかかれない人たちとの出会いが時にもったらされるものです。そうした人たちと一緒になって国際法の新たなフロンティアに挑戦するチャンスを与えられることもあります。」