神原元『ヘイト・スピーチに抗する人びと』(新日本出版社)
新大久保駅周辺でのヘイト・デモに対して取り組まれたカウンター行動に参加し、立ち会った弁護士による現場からの報告である。ヘイト・スピーチとは何か、法規制の可否、カウンター運動の原理について考える。ヘイト・スピーチの法規制について議論するための基礎情報を欠いたままの議論だが、現場でヘイトに立ち向かってきた弁護士による本だけに有益である。憲法論についても、憲法学者の立論よりも具体的で説得力があると思う。多くの憲法学者は憲法第21条の表現の自由だけを論じるが、著者は憲法第13条の人格権や憲法第25条の生存権にも言及している。的確である。