鳩山友紀夫・白井聡・木村朗『誰がこの国を動かしているのか』(詩想社新書)
元総理大臣の鳩山友紀夫、『永続敗戦論』の白井聡、平和学者で『核の戦後史』の木村朗の鼎談である。
副題は「一握りの人による、一握りの人のための政治を変える」。帯は「総理でさえままならない『対米従属』というこの国の根深い構造」。「新安保法制、普天間基地移設問題から、原発再稼働、従軍慰安婦問題、拉致問題まで、そこに通底する戦後日本の深層を暴き、『戦後レジーム』からの真の脱却、真の独立を説く!」。
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第1章 安倍政治、対米隷属レジームの正体
第2章 この国を動かしているのは誰なのか
第3章 日本人にとっての原爆、原発、核開発
第4章 沖縄から見えてくる日米関係の核心
第5章 いま求められている日本外交とは
第6章 拉致、慰安婦問題に垣間見える戦後日本人の被害者意識
第7章 「永続敗戦レジーム」から脱却するために
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<普天間基地の移設問題において、「最低でも県外」を模索していた鳩山総理(当時)に、腹案である徳之島への移設案を断念させたのは、官僚がねつ造した「極秘」文書だった疑惑が浮上。国家の方針を大きく左右し、政権をも崩壊させるきっかけとなった「極秘」文書を掲載!(第4章参照)>とあり、172頁に「極秘」文書が掲載されている。「最低でも県外」という鳩山総理をだまして「辺野古移設」を押し通すとともに、鳩山総理を退陣させることになった、官僚が捏造した文書である。
官僚が首相を差し置いて、アメリカと通謀していることはすでに知られていたが、そのために文書を捏造していたのだから、驚きあきれる。と言うか、日本の卑劣な官僚ならむしろ当然のことかもしれない。首相だろうが、国会議員だろうが、偽情報でだまし、世論操作し、官僚益を守るのはいつものことだ。立憲主義も民主主義もない。国民主権など最初から気にもかけていない。アメリカに従い、同時にアメリカの傘の下で、それぞれの私益を追及するために、官僚を中心に政官財、マスコミと御用学者が結託して、政治を引き回してきた。そこ「変化」が生まれるや、猛烈な反発をしてきた。その帰結が現状の日本、というわけだ。
「いま日本が本当に崩壊するか否かの危機的状況」に立ち向かい、日本社会の民主的変革のために闘う理論を提示し、呼びかける。
この3人は次の書物でも共同執筆している。
進藤榮一・木村朗編『沖縄自立と東アジア共同体』(花伝社)
それにしても木村朗の快進撃は驚異的と言うしかない。瞠目である。
木村朗・高橋博子『核の戦後史』(創元社)
浜矩子ほか『希望への陰謀』(現代書館)
また、次の本は、鹿児島大学大学院での講義の記録である。つまり、木村朗が産婆である。白井聡『戦後政治を終わらせる』(NHK出版新書)