Thursday, January 10, 2019

ヘイト・クライム禁止法(148)オーストラリア


オーストラリア政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/AUS/18-20. 15 March 206)によると、委員会はオーストラリアに条約第四条(a)の留保撤回を勧告したが、留保撤回の意思はないとしている。連邦レベルでは、一九七五年の人種差別法が人種憎悪の民事規制をしている。オーストラリア人権委員会には人種差別被害申立てを調停する権限がある。調停が不備に終わった場合、連邦裁判所における法手続きを開始することができる。人権委員会には、人種差別被害申立人のジェンダーや宗教を公表する権限はない。人権委員会の年次報告書によると、二〇一三~一四年、申立件数は二、二に三件であり、うち三八〇件が人種差別法に基づく。七一%で調停が成立した。

一九九五年の刑法典のもとで、人種、宗教、国籍、国民的又は民族的出身、政治的意見によって識別される集団に対する暴力を促すことは犯罪である。二〇一〇年、人種、宗教、国籍、国民的又は民族的出身、又は政治的意見に基づいて、集団又は集団構成員に対して実力又は暴力を行使することを促すことを犯罪化した。北部領域以外のすべての州および領域が人種憎悪を刑事又は民事規制する規定を設けている。

クイーンズランド州では、二〇〇一年以来、一九九一年の反差別法に、重大な人 種中傷の犯罪を導入している。同法一三一条Aは、公然たる行為によって、人種又は宗教に基づいて人又は集団に憎悪を煽動し、重大な侮辱をし、重大な嘲笑をしてはならないとしている。それには人または財産に対する物理的な害悪の脅迫、その煽動が含まれる。最高刑は七、九六九.五〇ドルの罰金、又は六月以下の刑事施設収容である。ただし、実際の訴追例はない。

人種差別撤廃委員会はオーストラリア政府に次のように勧告した(CERD/C/AUS/CO/18-20. 26 December 2017)。条約第四条(a)の留保は人種憎悪の制裁や被害者の救済に悪影響を与えている。条約第四条(a)の留保を撤回すること。人種主義と闘う措置を効果的に履行し、グラスルーツの組織や代表と連携すること。反レイシズム国家戦略のような措置を講じること。一般的勧告第三五号を想起して、「多文化オーストラリア――連合、強化、成功」政策の反テロ及び国家安全保障条項を見直し、アラブ人やムスリムを標的とした法執行官による民族・人種プロファイリングを禁止すること。人種主義ヘイト・スピーチや排外主義的政治発言と闘う措置を強化し、ヘイト・スピーチを公的に否定し、非難すること。一九ナナ五年の人種差別法第一八条のような反差別条項を実効的にすること。印刷物や電子メディアにおける人種主義ヘイト・スピーチを終わらせること。公衆、公務員及び法執行官に文化的多様性と民族相互理解を啓発すること。現代人種主義に関する特別報告者の勧告を検討し、履行すること。