植村裁判取材チーム編『慰安婦報道「捏造」の真実――検証・植村裁判』(花伝社、2018年)
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誰が、何を、「捏造」したのか
法廷で明かされた“保守派論客”の杜撰な言論
櫻井よしこ・西岡力が事実を歪曲し、世論をミスリードした慰安婦問題
「事実」をめぐる論戦はまだ続く
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1 問われる「慰安婦報道」とジャーナリズム
2 個人攻撃の標的にされた「小さなスクープ」
3 櫻井よしこが世界に広げた「虚構」は崩れた
4 西岡力は自身の証拠改変と「捏造」を認めた
5 櫻井と西岡の主張を突き崩した尋問場面
6 「真実」は不問にされ、「事実」は置き去りにされた
7 植村裁判札幌訴訟判決 判決要旨(2018年11月9日)
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「慰安婦」問題を取り上げた植村隆(朝日新聞記者・当時)の記事は、金学順さんの経歴、「慰安婦」になった経緯を誤報した。事実を書かず、事実でないことを書いた、しかも義母の便宜供与によって事実を歪めて書いた。それゆえ「捏造」である。――2014年に大騒動となった「慰安婦」記事捏造問題は、実はまったく逆に西岡力、櫻井よしこによる「捏造」であった。この驚くべき事実を、本書は見事に解明している。
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西岡と櫻井は、金学順さんの1991年のカムアウト、記者会見、及び訴状をもとに、植村記者が事実を歪めて書いたと主張した。例えば櫻井は次のように書いた。
「訴状には、14歳のとき、継父によって40円で売られたこと、3年後、17歳のとき、再び継父によって、北支の鉄壁鎮というところに連れて行かれて慰安婦にさせられた経緯などが書かれている。
植村氏は、彼女が継父によって人身売買されたという重要な点を報じなかっただけではく、慰安婦とは何の関係もない『女子挺身隊』と結びつけて報じた。」
西岡と櫻井は、植村記者に「捏造」とのレッテルを貼り、大宣伝した。これにより週刊誌やインターネット上では、捏造記者・植村に対する非難の嵐となった。植村は就職が決まっていた大学教授の地位を失い、家族のプライバシーを侵害され、社会的に抹殺されそうになった。
これに対して、植村は己の名誉と家族の安全のために、反撃に出た。「私は捏造記者ではない」。そして、西岡と櫻井それぞれを相手に名誉毀損裁判を起こした。
裁判において明らかになったのは、植村の記事は事実を正確に紹介したこと、これに対して、西岡と櫻井の記事はおよそ事実からかけ離れていたことであった。
2018年3月23日札幌地裁での尋問である。
川上(原告代理人弁護士)「訴状には『継父によって』という記載がない、これは間違いないですね」
櫻井「はい」
川上「『40円で』という言葉も訴状には出ていないことも間違いありませんね」
櫻井「はい」
川上「『売られた』という単語も入っていませんね」
櫻井「はい」
川上「あるいは、訴状には、『継父に慰安婦にさせられた』との記載もありませんね」
櫻井「はい」
川上「訴状には、『継父によって人身売買された』との記載もありませんね」
櫻井「はい」
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金学順が継父によって人身売買されて慰安婦となったという櫻井や西岡の主張には何ひとつ根拠がなかった。二人の「創作」である。櫻井と西岡は、自分たちの「創作」に基づいて、植村に「捏造」との非難を浴びせたのだ。このことを本書はていねいに明らかにしている。本書の結論は明快である。
「櫻井の言説こそ『ジャーナリストとしてあってはならない』ものではないのか。」
「自ら法廷で示した定義によって、西岡力は自らが『捏造学者』であることを立証した、と言っても過言ではない。」
両名の尋問記録が収録されているので、読者は迫真の「捏造暴露」過程をを読むことができる。