根津朝彦『戦後日本ジャーナリズムの思想』(東京大学出版会、2019年)
<ジャーナリズムはいかにあるべきか.1945年の敗戦以降からの戦後日本ジャーナリズム史研究の領域を確立し,メディアが多様化する現代に対して,戦後の日本社会におけるジャーナリストたちが創造的な言論・報道を体現していく歴史をひもとき,ジャーナリズムの思想的財産を解き明かす.>
書店で手にとって、著者の名前はなんとなく記憶にあるなとか、よくあるジャーナリズム史論かなと思いつつ、買おうかどうしようか悩んだ。通史ではなく、重点的に描いている。そのほうが突っ込んだ議論になっているかもしれない。「第II部 ジャーナリズム論の到達点」で「ジャーナリズム論の先駆者・戸坂潤」を取り扱っているのが気になった。戸坂潤を「ジャーナリズム論の原点」ではなく「ジャーナリズム論の到達点」としている。いかなる含意なのか。
と思いながら目次を辿ると、荒瀬豊や原寿雄を論じているが、それに続いて、「第6章 「戦中派」以降のジャーナリスト群像」に「三 男社会における女性記者たちの試練」という項目が眼に入った。
なんと松井やより、吉武輝子、増田れい子、矢島翠を扱っている。主に松井やよりと増田れい子。400頁の本に僅か16頁とはいえ、女性記者を位置づけている。
「矢島翠が天皇制の問題を通じて記者をやめる一方で、後の二○○○年に女性国際戦犯法廷で天皇の戦争責任にも向き合っていくことになるのが松井やよりであった。」との一文もある。
著者は「あとがき」で「一番読んでもらいたい章」が第六章だという。戦後日本のジャーナリストの問題意識と志を扱っているからだ。というわけで本書を購入した。
著者の名前を以前に見たのは『季刊戦争責任研究』で「8.15社説における加害責任」の分析をしていたからだ。
これから読もう。