Friday, May 10, 2019

桐山襲を読む(8)第三書館版・パルチザン伝説


『パルチザン伝説・コペンハーゲン天尿組始末』(第三書館、1984年)

作者桐山の意志に反して出版された、海賊版である。

1983年10月の『文藝』に「パルチザン伝説」が掲載された。『週刊新潮』10月26日号が「第二の風流夢譚事件か?」をあおり、右翼が河出書房新社に押しかけ、河出は単行本にしないことを「約束」してしまった。桐山はやむをえず作品社からの出版計画を進めたが、先行して第三書館が桐山の意志に反して出版した。

また、第三書館版は、文学作品としての小説の出版ではなく、「最後のタブー=天皇に挑戦!! 昭和IS OVER!!」と打ち出し、座談会「コペンハーゲン天尿組始末」、高野孟「天皇Xディ--昭和が終わる時」、ドキュメント「天皇戒厳令の街から」などと併せて1冊とした。政治文書としてのパルチザン伝説である。

第三書館版は1984年3月、桐山自身の作品社版は1984年6月の出版。


さらに、桐山による『「パルチザン伝説」事件』は1987年である。



1983年の事件はニュースで見たように記憶していたが、はっきりしない。1987年の『「パルチザン伝説」事件』を読んで、2冊のパルチザン伝説が出ていることを知り、生協書籍部で第三書館版を購入して読んだ。当時作品社版を手にしていない。事件のニュースを見たという記憶も怪しい。『「パルチザン伝説」事件』に収録された資料を読んだ記憶と混同しているかもしれない。