<明日の講演のレジュメ>
「生きる力、つながる力、考える力」第2回
2022年9月27日(火)午後1時~
ステッチ(玉川上水駅)
ヘイト・クライム被害救済のために
――安倍晋三国葬の日に民主主義と人権を考える
前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師)
1.
安倍国葬の日に
2.
ウトロ等放火事件を手がかりに
3.
ヘイト・クライムとは何か
4.
ヘイト・クライムの予防
5.
ヘイト・クライムの被害救済
6.
民主主義とレイシズム
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1.安倍国葬の日に
1)
国葬反対の取り組み
・国葬反対仮処分申請(横浜地裁、さいたま地裁など)
・国葬反対差止訴訟(東京地裁、横浜地裁など)
・地方自治体・住民監査請求(大阪、横浜、長野など)
・地方議会・意見書(鎌倉市、国立市、小金井市など)
・教育委員会へ弔意強制反対(全国的)
・反対声明、反対署名(憲法学者、著名人など)
・各地の抗議集会(全国各地)
2)
何を考えるべきか
・民主主義のあり方
・人権保障のあり方
2.ウトロ等放火事件を手がかりに
⇨文献⑨
2021年8月30日 ウトロ放火事件
2022年8月30日 京都地裁判決(有罪・懲役4年)
・ウトロの歴史 ⇨中村一成『ウトロ』、文献⑥
・ウトロに対するヘイト・スピーチ
・ウトロに対するヘイト・クライム
・ヘイト・スピーチとヘイト・クライム
・判決における動機の認定と「差別」 ⇨文献②
第1にヘイト動機を列挙する場合
第2に身分犯として公務員犯罪類型が設定される例
第3に場所(空間・対象)の特定
第4に被害者の特定
・量刑について ⇨文献⑨⑩
⇨文献②
1)
アメリカにおけるヘイト・クライム論(1980年代以後)
・刑罰加重法
・独立犯罪
・公民権法
・情報収集法
2)
保護される集団(属性)
・偏見に基づく暴力を犯罪化する場合:45州とコロンビア特別区
・人種、民族、宗教の集団を保護する場合:大多数の州
・性的指向を保護する場合:32州
・ホームレスを保護するか否か
3)
マシュー・シェパード・ヘイト・クライム法(2009年)
4)
国際人権法におけるヘイト・クライム法
・人種差別撤廃条約第2条、第4条
・人種差別撤廃委員会の一般的勧告
・各国への勧告
・ラバト行動計画
・国際人道法
5)
ヘイト・クライム立法例
・ヘイト・クライムの犯罪成立要件を定める場合
・ヘイト・スピーチに暴力が伴う要件を定める場合
・暴力犯罪にヘイト動機を刑罰加重事由とする場合
・刑法総論で刑罰加重事由にヘイト動機等を含める場合(以上は刑法典)
・ヘイト・クライム法
・反差別法
・過激主義取締法等
6)
アジア系住民へのヘイト・クライム法(2021年) ⇨文献④
・新型コロナ禍におけるアジア系住民へのヘイト・クライム
4.ヘイト・クライムの予防
・差別の禁止
・ヘイト・スピーチの刑事規制
・ヘイト・クライムの重罰化
外国人人権法連絡会の提唱「差別犯罪」(前回報告)
・対抗言論
・教育・啓発
・行政指導
5.ヘイト・クライムの被害救済
⇨文献①⑤⑦
・被害者中心アプローチ
・EU『政策文書:ヘイト・クライム被害者のための専門家支援』
・適切な専門家支援の提供
① 偏見動機の犯罪の影響を受けたすべての者に支援を確保する。
② 共通の質的基準を確保するため専門家ネットワークを組織する。
③ 効率的な監視と評価。
④ 担当者の教育を継続する。
⑤ 多様なコミュニティに適切なサービスを提供する保障。
⑥ すべての被害者に専門家支援の平等性。
⑦ 専門家協力のためのメカニズム設置。
⑧ コミュニティ代表の参加を得て、政策遂行と同時に評価を行うこと。
・ヘイト・クライム被害者のニーズ
① 個人の安全(反復被害や二次被害からの安全も含む)
② 医療支援、財政支援、転居など実際の援助
③ 感情的精神的支援
④ 情報及び助言
⑤ 刑事司法制度における援助
⑥ 尊重ある取り扱い
・専門家による被害者支援の特徴
・専門家支援の実例
① 国内の犯罪被害補償制度、被害者の刑事手続きにおける役割、法廷への出席等の被害者の権利についての情報、助言、支援。
② 専門家支援実施の情報・直接紹介。
③ 感情的精神的支援。
④ 犯罪から生じた経済問題に関する助言。
⑤ 二次被害や反復被害のリスクと予防に関する助言。
6.民主主義とレイシズム
・民主主義とレイシズムは両立するか
・民主主義の前提としての法の下の平等
・民主主義の前提としてのマイノリティの権利
・ヘイトは民主主義を破壊する
<参考文献>
①前田朗「『慰安婦』問題の現状と課題――<被害者中心アプローチ>とは何か」『法の科学』51号(日本評論社、2020年)
②前田朗「ヘイト・クライムとは何か――国際社会における差別犯罪対策」『明日を拓く』131号(2021年)
③前田朗「忘れられたヘイト・クライム――千葉朝鮮総連強盗殺人放火事件」『部落解放』812号(2021年)
④前田朗「COVIDヘイト・クライム法――アジア系住民への差別と暴力」『部落解放』821号(2022年)
⑤前田朗「ヘイト・クライム被害者救済(一)(二)――EUのモデル・ガイダンス」『部落解放』823・825号(2022年)
⑥前田朗「底が抜けた差別社会で生きること」『部落解放』827号(2022年)
⑦前田朗「ヘイト・クライム被害者救済のために――EU政策報告書の紹介」『人権と生活』54号(2022年)
⑨前田朗「ウトロ放火事件一審有罪判決」『救援』642号(2022年予定)
⑩前田朗「刑事司法におけるヘイト・クライム被害者――欧州安全保障協力機構(OSCE)報告書の紹介(1)」『Interjurist』209号(2022年予定)