Friday, October 14, 2011

ボードマン『放射線の衝撃』

ドネル・ボードマン『放射線の衝撃――低線量放射線の人間への影響』(PKO法「雑則」を広める会)



原著は1990年のもののようで、1991年に翻訳されています。翻訳は肥田舜太郎さん。それを、2008年にPKO法「雑則」を広める会が継承し、本年7月に通算第5刷が出ました。用いられているデータは1990年までのものですから、古いと言えば古いのですが、基本的な考え方は参考になります。何よりも、2008年5月30日の大阪高裁の、原爆症認定集団訴訟判決において引用されているのが本書なのです。本文107頁。



抜粋


序論


第一章 低線量放射線の影響


第二章 問題の重要性


第三章 電離放射線生物学


第四章 被曝者の医療管理


第五章 討論


第六章 勧告


第七章 総括と結論


後書きの言葉


附録A~K


症例発表



冒頭の抜粋は「放射線被曝者の診断と医療管理者の諸問題への入門」とあり、「入門書」ですが、私にはかなり難しいです。「重要な科学的な調査が、医学の専門家もふくめて一般大衆から大きく遠ざけられ、研究者の間でさえ意見交換が制限された」と始まります。状況は今も変わっていないように思います。もちろん、「だれが制限しているのか」を問う必要もあります。すぐ続いて「電離放射線はどんな線量レベルでも、すべての生物学的物質に対し、分子、原子の次元で高度に有毒である;それは抑えきれないし制御しえない」としています。



総括と結論を紹介しておきます。



A.電離放射線への被曝は-低線量への被曝でも-急性放射線症候群、又は晩発性の癌、白血病、先天性欠損以外に、より複雑な障害を引き起こす。


B.電離放射線によるエネルギーの沈着は無作為の経過をとる。物質の小さな容量の中で相互に影響し合う同エネルギーのまったく同じ分子は、偶然だけの理由によってエネルギー量を違えて沈着する。(略)


C.生物学的な修復反応は奇跡的だが不完全である。損傷はあらゆる種類の生物物質に対し、執拗に、時には世代を超えて与え続けられる。治療法はない。


D.低線量放射線被曝の明らかな障害のすべてを認めるために、われわれは、開業医が非定型的で通常のパターンでない、どんな器質的、機能的な異常とも同じ肉体的な異常を伴う疾病に注意しなければならないと確信している。残念なことに、臨床記録は常にあまり助けにならない。


E.人工の放射線は増え続けており、何世紀にもわたって生物圏の一部分であり続けるだろう。放射性同位元素を非活性化する方法は、現在のところ存在しない。

Wednesday, October 12, 2011

フィラトワ『ゴーストタウン――チェルノブイリを走る』

エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ『ゴーストタウン――チェルノブイリを走る』(集英社新書)
 
http://www.excite.co.jp/News/release/dreamnews_0000037945.html
 
ネットで話題となった、四半世紀後のチェルノブイリ紀行が待望の書籍化。
『ゴーストタウン チェルノブイリを走る』(エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ著/池田紫訳/集英社刊)が9月16日に発売!*
 
 
四半世紀後のチェルノブイリの汚染地帯の実相を写真と文で伝えたエレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワのウェブサイト、elenafilatova.com。このウェブサイトは世界的な反響を呼び、現在10数カ国語で翻訳公開されており、本書は日本語版の一部を書籍化したものです。
 
「チェルノブイリの原子炉から
250キロメートル圏内では、
2000を超える街や村が消えた。
毎年ここに来る度に、
朽ちていくものが増えていく」
 
 1986年の事故から四半世紀後のチェルノブイリの世界。放射性物質による汚染の末に無人となり、時間が消えた大地をモーターサイクリストにして写真家のエレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワが走破する。本書は、廃墟に残るかつての暮らしの気配を辿り、人工物を無造作に覆いつくしていく自然、そして原子力災害の現実を静かに表現した詩的文明批評である。
【目次】
はじめに /第一章ゴーストタウン /第二章オオカミの大地 /第三章二〇〇七年春 /第四章冥王の国(プルート・レ ルム) / 訳者あとがき /関連年表
 
元のウェブサイトは
http://www.kiddofspeed.com/japanese/
 
こんな言葉がありました。
 
「石棺の放射能は、少なくとも10万年残る。エジプトのピラミッドは、5000年から6000年前に作られた。文化はその区切り区切りに、消えないものを残してくれる。ユダヤの時代は聖書を、ギリサの文化は哲学を、ローマは法律を。そしてわれわれは、この石棺を残す。石棺は、この時代の何よりも長く、ピラミッドより長く残るだろう。」(59頁)
 
フクシマは何を残すのでしょう。

児玉龍彦『内部被曝の真実』

児玉龍彦『内部被曝の真実』(幻冬舎新書、2011年)



7月27日の衆議院厚生労働委員会における参考人意見が大変な話題となり、


ユーチューブ再生100万回の児玉さんの著書ですが、第一部は、参考人発言を


収録しています。映像で見るのと、文章で読むのとでは、また 少し違う印象で


すが、短い中に、言うべきことをしっかり言う姿勢が明確です。



第二部は「疑問と批判に答える」で、8月6日に「ニュースにだまされる


な!」に出演した時の発言です。



「データが足りないときこそ予測が大事」



「線量を議論しても意味がないのはなぜか」



「危険を危険だとはっきり言うのが専門家」



第三部は「チュルノブイリ原発事故から甲状腺がんの発症を学ぶ」です。安易


な「エビデンス論」への疑問を述べています。



第四部は「チェルノブイリ膀胱炎」で、セシウム137低線量被曝が長期にわ


たると何をもたらすかがわかります。



「前がん状態チェルノブイリ膀胱炎の発見」



「チェルノブイリ住民に匹敵する福島の母乳のセシウム汚染」



「子どもたちの接触・吸入を防ぐために今すぐ除染を」



「被災者の立証は不可能である――東電、政府の責任」



おわりにで「私はなぜ国会に行ったか」で、福島での除染活動で痛感したこと


を中心に、述べています。最後は次のようになっています。



「福島原発の除染については、すべてはこれからである。われわれは、祖国の


土壌という、先祖から預かり子どもに伝えるかけがえのない財産を汚染してし


まった。



しかし、人が汚したものなら、人がきれいにできないわけがない。



そのために全力を尽くすのがわれわれ科学者の責任である。



 こう思って話し出したら胸がつまってしまった。もっと理性的にならねばな


らないと思いつつ、自分の中で、怒りと理性がぶつかって、抑えきれなくなった。



 あまりに感情的になり、申し訳なく思っている。」



「専門家とは、歴史と世界を知り知恵を授ける人」という言葉も使われていま


す。まさに専門家。そして「科学者の責任」です。




 評論家の佐高信さんが、デタラメ教授やダマシタ教授について、単に「専門バ


カ」ではなく「専門もバカ」と言っていますが、本当に「専門もバカ」が多く


て困ります。科学者の責任など省みず、特権の上に胡坐をかいている御用学者たち。



でも、ちゃんとした専門家もたくさんいます。どんどん出てきて頑張ってほし


いものです。というか、黙々と頑張ってらっしゃる方たちがいます。



付録の資料は衆議院に提出したものです。本文わずか136頁、付録資料を入


れても165頁です。すぐ読めます。



衆議院発言と付録資料はすでに映像で見ているものですが、それでも必読の書


です。



私が期待していたのは、上記の項目見出しの「線量を議論しても意味がない」


の部分でした。参考人発言の真ん中あたりで話していたことです。濃縮や集積の


話です。



今回の問題は、「総量で原爆数十個分に相当する量が漏出し、原爆汚染よりも


ずっと大量の残存物を放出したということが、まず考える前提になります。」


「総量が少ない場合には、ある人にかかる濃度だけをみればいいです。しかし


ながら総量が非常に膨大にありますと、これは粒子の問題になります。」



これが発言後半で、例えば滑り台の下の部分が放射線が高いという話につなが


ります。雨が降ったり、子どもたちが滑ることによって、放射能は下の台に濃縮


するのです。雨どいや道路の側溝や、稲わらに濃縮するという 話につながりま


す。つまり、ある地域の放射線を計測して平均値を出しても、それだけではまっ


たく無意味です。そこから議論を立てることなどできません。一番やらなけれ


ばならないのは、子どもたちが手を触れる場所の迅速徹底的な除染なのです。除


染の専門家には当たり前の話を、7月27日、児玉さんが国会で発言したので


す。政府も御用学者も誰一人として国民に伝えませんでした。



次に内部被ばくです。



「内部被ばくと言うのは、さきほどから何ミリシーベルトというかたちで言わ


れていますが、そういうのはまったく意味がありません。I131は甲状腺に集


まります。トロトラストは肝臓に集まります。セシウムは尿管 上皮、膀胱に集


まります。これらの体内の集積点をみなければ、いくらボディホールカウンター


で全身をスキャンしても、まったく意味がありません。」



つまり、濃縮は二重の過程で起きます。日常空間の中で水や空気の流れによっ


て放射能が、滑り台の下、側溝、稲わらなどに濃縮します。さらに、人体に取り


込まれると、それぞれ甲状腺、その他に集積していきます。両方のメカニズム


をしっかりわきまえて議論しなければならないし、除染しなければなりません。



なるほどと思って振り返ってみると、4~7月には、みんな、懸命になってミ


リシーベルトだマイクロシーベルトだと大騒ぎしていましたが、8~9月にはそ


ういう議論は激減しました。児玉さんの話で、理解できたからでしょう。それ


以外にも、同様のことを述べて広めた方がいたのでしょうか。単に町中の線量を


計測して、その数値をあげつらっても、それだけでは子どもたちの被曝の予防にはまったく


意味がないということを。

和田武『脱原発、再生可能エネルギー中心の社会へ』

和田武『脱原発、再生可能エネルギー中心の社会へ』(あけび書房、2011年)


http://www.akebi.co.jp/


http://www.akebi.co.jp/html/tosyo/101datugenpatu-mokuji.html



<「原子炉を止めたら電力不足」ってホント? 「原子力発電は経済的」ってホント? なぜ、日本政府やマスコミは「原発は安全だ」と言ってきたの? 地震大国日本で原発は大丈夫? 等々の素朴な疑問がパッと晴れる、目からウロコの1冊です。


 「脱原発」はもはや世界の流れです。世界各国の脱原発の政策と実施の現状、そして日本での実現の道筋を分かりやすく記します。チェルノブイリ事故など放射能汚染の実態も。図表、写真なども豊富。筆者は日本環境学会会長。好評前書『環境と平和』著者>



ブックレット108頁なのですぐに読めます。著者は、元立命館大学産業社会学部教授で、専門は環境保全論・資源エネルギー論、日本環境学会会長、自然エネルギー市民の会代表です。著書に『拡大する世界の再生可能エネルギー』『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』『地球環境論』など。



日本環境学会


http://jaes.sakura.ne.jp/



自然エネルギー市民の会


http://www.parep.org/



自然エネルギーに関する本もたくさん出ていますが、本書の特徴は、第4章の目次を見ればわかるように、住民・市民参加、自治体による自然エネルギー、地域社会における取組を重視し、実践的にすすめていることです。



「エネルギー生産手段導入の選択基準は、市民・自治体の場合は利潤最優先ではありません。企業の場合、従来の生産手段よりもコスト的に有利で利潤増加が見込める生産手段は積極的に導入しますが、そうでなければ積極的には導入しません。大きな利益が得られなくても、損をしない条件さえあれば、地球温暖化防止などの環境保全を願う立場から、市民や自治体は再生可能エネルギーに取り組むのです。」



「再生可能エネルギーは地域社会(市民や自治体)にメリットをもたらします。安全・安心なエネルギー供給、地域環境保全、地域社会の活性化、市民間あるいは市民・行政・企業間の協力協同関係の発展など、住みよい地域社会をもたらします。」





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第1章 原発依存社会の危険性  福島第一原発事故を踏まえて


 1 放射線、放射性物質、原子力発電


放射線/放射性物質と原子力発電
広島原爆1000発分の放射性物質蓄積/放射線による健康影響
晩発性影響/チェルノブイリ原発事故



 2 福島第一原発事故の発生とその影響
 3 福島第一原発事故の本当の原因


自然災害か人災か/筆者が指摘してきたこと/地震学者たちの警告


 4 事故原因をつくり出した社会的背景


政・官・財・学の原発利権癒着/原発関連の交付金
原発建設から廃棄までの甘い汁/原子力推進政策をつくる人々
原子力政策機関や電力会社への天下り
電力会社から研究者への莫大な「寄付金」
国民を原子力支持にする宣伝・広報・教育


第2章 地球温暖化がもたらす未来危機とそれを回避する条件
 1 人類生存の危機をもたらす地球温暖化
 2 不可逆的で回復不可能な現象


海洋酸性化による海洋生物の危機/凍土融解の進行による温暖化加速
海洋大循環の停滞による気象激変/氷床崩壊による海面の急上昇


 3 各国のエネルギー対策の動向
 4 危機回避に不可欠な温室効果ガスの大幅削減


危機回避のための温室効果ガス削減
原発に依存せず、温室効果ガス削減計画に取り組んだデンマーク
ドイツの脱原発・温室効果ガス大幅削減シナリオ
欧州諸国の中長期温室効果ガス削減方針と原子力


第3章 原子力と再生可能エネルギー
 1 原子力と再生可能エネルギーの特徴


資源としての特徴/生産手段の特徴


 2 住民主導の再生可能エネルギー普及


デンマークの風力発電と地域暖房
ドイツの脱原発下での温暖化対策と再生可能エネルギー発電の普及
電力買取補償制度による再生可能エネルギー発電の普及促進
再生可能エネルギーの熱・燃料利用分野での普及
農村地域を中心に全国に広がる再生可能エネルギー普及推進地域
ローデネ村の市民会社がつくった草原太陽光発電所
反原発から再生可能エネルギー100%地域づくり


第4章 日本での脱原発・再生可能エネルギー中心の持続可能な社会づくり


 1 日本の温室効果ガス削減目標と現状
 2 日本の再生可能エネルギー普及の現状


日本と諸外国の再生可能エネルギー利用状況


 3 日本での再生可能エネルギー中心の持続可能な社会づくり


地球温暖化防止と持続可能な社会づくりを目指すエネルギーシナリオ
日本の利用可能な再生可能エネルギー資源量
日本の再生可能エネルギー発電電力買取制度案とその問題点
適切な再生可能エネルギー電力買取補償制度による飛躍的普及
再生可能エネルギー熱利用、燃料利用の推進政策
日本の市民参加による再生可能エネルギー普及
日本の自治体による再生可能エネルギー普及
地域社会の取り組みによる再生可能エネルギー普及促進
再生可能エネルギー普及促進による社会的メリット


資料 日本環境学会緊急提言(2011年4月16日)
    「震災復興と脱原発温暖化対策の両立を可能にするために」

広河隆一『福島 原発と人々』

広河隆一『福島 原発と人々』(岩波新書、2011年)

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/eastds/index.html
 
3.11が起きるや、現地に飛んでいき、放射能線量をはかり、見るべきものを見、聞くべきことを聞き、取材を重ねてきた広河さんの報告です。
 
第 1章地震、そして事故発生 
第 2章原発作業員は何を見たか 
第 3章避難した人々 
第 4章事故の隠蔽とメディア 
第 5章広がる放射能被害 
第 6章子どもと学校 
第 7章チェルノブイリから何を学ぶか 
第 8章これからのこと
 
本文最後に「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表の中手聖一さんの言葉が引用されています。
 
「自治体は市民の流出を何としてでも妨害しようとしています。日本ってこんな国だったのかとあきれています。ただ、私たちは今は緊急事態だから、子ども
たちを守るために、やらなければならないことは全部やろうと 決めました。まさに走りながら考えようと言うことです。
 
子どもたちを守るっていうのはある意味利己心なんです。でも一番美しく、正当な利己心だと思っています。」
 
当たり前のことを当たり前に述べた、素晴らしい言葉です。6月24日に始まった「福島集団疎開裁判」に関しての言葉です。
 
自分は安全圏にいながら、「緊急事態だから被曝は仕方ない」などと言う異常な人間がいます。「緊急事態だから必死で子どもを守らなければならない」――これがまっとうな人間の発言です。
 
自分は安全圏にいながら、具体的な事実に基づかずに、「緊急事態だから大量の避難は現実的でない」などと、異常なことを平気で言う人間がいます。避難する努力さえせずに、避難しようとする人を押しつぶして、「現実的でない」と言い放ちます。
 
半年以上たっても「緊急事態だから仕方ない」。政府や県や御用学者のデマに便乗して、「棄民政策」を裏から支える声が市民の中からも出ています。中手さんとはまったく逆の「下劣な利己心」です。
 
福島の人たちと東京の市民が本当に向き合い、つながっていくための重要な知恵が本書にちりばめられています。

小出裕章・矢ヶ崎克馬『3・11原発事故を語る』


小出裕章・矢カ崎克馬『3・11原発事故を語る』(本の泉社、2011年)


http://honnoizumi.shop-pro.jp/?pid=34228623




私が編集委員に加わっている雑誌『日本の科学 者』10月号に広告がのっていました。これまで知りませんでした(汗)。



<国はいま、全国で国民が心配している、汚染された物質を吸い込んだり食べたり飲んだりする肝心の「内部被曝」を説明せず、一〇年後、二〇年後に現れるかもしれない晩発性障害の危険性には触れようとしない。だから私たちは、政府が忠実に基にしている「ICRP」基準にも「内部被曝」が無視されている、


という強い疑いをもっている。


 もちろん、内部被曝、低線量放射能が「人」に与える影響については、国際


的にも、国内的にもいろいろな説があることを知っている。しかし、だからよく分からない、と無視して「安心」するのか。「限りなく被曝ゼロをめざし、最大限の注意をして、不条理な被曝は可能な限り避ける」のか。私たちは、次の世に放射能汚染環境を残さないためにも、汚染をゼロに近づけるべく、考え、行動すべきだと思う。そのために、この冊子を役立てて欲しい。>



まともな科学者の判断は、まともな市民の普通の感覚に合致するのです。科学はとっぴなことを主張するためにあるのではないからです。

反原発運動全国連絡会編『福島・柏崎刈羽の原発震災』

反原発運動全国連絡会編・末田一秀・武本和幸『福島・柏崎刈羽の原発震災』(七つ森書館、2011年)


http://www.pen.co.jp/index.php?id=602&searched=%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%88%88%E7%BE%BD&advsearch=oneword&highlight=ajaxSearch_highlight+ajaxSearch_highlight1



かねてから警告していた地震による原発事故、原発震災が現実のものとなってしまった。本書では、福島・いわき市会議員の佐藤和良氏による現地の報告をはじめ、現行の原子力防災計画や耐震設計審査指針がいかに破綻しているかを明らかにする。「放射能汚染と向き合うためのQ&A」も掲載。>



6月に出版されたブックレット(109頁)です。コンパクトですが、重要な情報がたくさん。まえがきでは「大地震・津波の危険性、電源喪失事故、集中立地の危険性、大事故が起こったときの決死隊の問題、一〇キロ圏内のみの防災対策の問題点等々、現在進行形の事態を多くの人が古くから指摘してきました」と述べています。その通り。にもかかわらず、「ただただ原発推進あるのみとの姿勢が、今回、日本政府・東京電力の事故への対応が後手後手にまわった要因の一つです。それでも「想定外」と居直るのは、人の道を逸脱した犯罪行為にほかなりません」。
 さらに、「本稿執筆時点では、福島第一原発は冷温停止に至っておらず、事故の収束を見通せない状況が続いています。冷却機能の確保とこれ以上の放射能の放出・漏洩による汚染防止対策が重要です」とあります。たぶん4月後半か5月上旬の時点のことです。今も同じ状況が続いています。東電は100度を切ったと宣伝しています。それはそれで少しは全身かもしれませんが。また、「労働者の安全に十分留意しなければならないことは言うまでもありません。住民の被曝は、年間一ミリシーベルト以下になるよう、さまざまな手立てをすみやかに行う必要があります。巨大な放射性廃棄物と化した福島第一原発の処理処分は、数十年単位の長い闘いになるでしょう」と述べているのも重要です。
 全国各地で脱原発を求めて原発や原子力施設の反対運動を続けてきた反原発運動全国連絡会の立場から、「私たちが今一緒になってできることを追求したいと思います」。納得。




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著者


末田 一秀(スエダ カズヒデ)


1957年 大阪府生まれ。はんげんぱつ新聞編集委員。自治労脱原発ネットワークアドバイザー。1980年から現在まで環境行政に従事。原水禁と原子力資料情報室の呼びかけで組織されたJCO臨界事故総合評価会議で原子力防災問題を担当。


武本 和幸(タケモト カズユキ)


1950年 新潟県生まれ。はんげんぱつ新聞世話人兼編集委員。柏崎刈羽原発反対同盟。測量士・技術士・一級土木施工管理技士・住宅地盤調査主任技士。75年〜99年 刈羽村村議会議員。1964年新潟地震、2004年中越地震、2007年中越沖地震を経験。中越地震・中越沖地震では災害調査や住宅復旧計画に関わる。



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序 章 福島原発を襲った大地震 
    現実となった原発震災
    既設の原子力施設は直ちに運転を停止すべき

第1章 原発震災、福島いわき市からの報告
     ──福島県いわき市市会議員 佐藤和良
    震災後、最初の一週間
    原発震災で浴びる放射能汚染
    子どもたちをどう守るか
    3・11から被曝後の世界に入った
    原発を受け入れてきた五〇年
    福島原発は廃炉しかない
    福島原発は廃炉に、全原発を止めろと、みんな声を上げよう

第2章 破綻した原子力防災
    1 原子力災害対策特別措置法の特徴
    2 事故想定
    3 防災対策を重点的に充実すべき地域
    4 オフサイトセンター
    5 原子力緊急事態宣言の発出
    6 事故情報の中央統制
    7 国と自治体の関係
    8 予防避難の考え方
    9 避難の基準
    10 災害要援護者対策

第3章 放射能汚染と向き合うためのQ&A

第4章 原発は地震に備えてきたか
    1 地震はなぜ起きるのか
    2 活断層とはなにか
    3 アスペリティとは
    4 地震の揺れについて
    5 耐震設計審査指針とは
    6 震源を特定する地震動の評価方法
    7 「震源を特定せず策定する地震動」とは
    8 残余のリスクとは
    9 原子炉を設置する地盤はいかにあるべきか
    10 地震随伴事象とは
    11 バックチェック中間評価結果
    12 変動地形学に基づく活断層調査とは
    13 活断層の上に立つ原発
    14 揺れを増幅する地下構造の上に原発
    15 バックチェック結果のその後は

第5章 柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震
    1 中越沖地震の概要と計測された地震動
    2 止める、冷やす、閉じこめる
    3 原発が受けた被害は?
    4 基準地震動S2を超えた意味
    5 柏崎刈羽の地震・地盤論争
    6 地盤の隆起・沈降の意味──地殻変動と地盤破壊
    7 隠されていた海底活断層
    8 ハギトリ波解析結果