反原発運動全国連絡会編・末田一秀・武本和幸『福島・柏崎刈羽の原発震災』(七つ森書館、2011年)
<かねてから警告していた地震による原発事故、原発震災が現実のものとなってしまった。本書では、福島・いわき市会議員の佐藤和良氏による現地の報告をはじめ、現行の原子力防災計画や耐震設計審査指針がいかに破綻しているかを明らかにする。「放射能汚染と向き合うためのQ&A」も掲載。>
6月に出版されたブックレット(109頁)です。コンパクトですが、重要な情報がたくさん。まえがきでは「大地震・津波の危険性、電源喪失事故、集中立地の危険性、大事故が起こったときの決死隊の問題、一〇キロ圏内のみの防災対策の問題点等々、現在進行形の事態を多くの人が古くから指摘してきました」と述べています。その通り。にもかかわらず、「ただただ原発推進あるのみとの姿勢が、今回、日本政府・東京電力の事故への対応が後手後手にまわった要因の一つです。それでも「想定外」と居直るのは、人の道を逸脱した犯罪行為にほかなりません」。
さらに、「本稿執筆時点では、福島第一原発は冷温停止に至っておらず、事故の収束を見通せない状況が続いています。冷却機能の確保とこれ以上の放射能の放出・漏洩による汚染防止対策が重要です」とあります。たぶん4月後半か5月上旬の時点のことです。今も同じ状況が続いています。東電は100度を切ったと宣伝しています。それはそれで少しは全身かもしれませんが。また、「労働者の安全に十分留意しなければならないことは言うまでもありません。住民の被曝は、年間一ミリシーベルト以下になるよう、さまざまな手立てをすみやかに行う必要があります。巨大な放射性廃棄物と化した福島第一原発の処理処分は、数十年単位の長い闘いになるでしょう」と述べているのも重要です。
全国各地で脱原発を求めて原発や原子力施設の反対運動を続けてきた反原発運動全国連絡会の立場から、「私たちが今一緒になってできることを追求したいと思います」。納得。
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著者
末田 一秀(スエダ カズヒデ)
1957年 大阪府生まれ。はんげんぱつ新聞編集委員。自治労脱原発ネットワークアドバイザー。1980年から現在まで環境行政に従事。原水禁と原子力資料情報室の呼びかけで組織されたJCO臨界事故総合評価会議で原子力防災問題を担当。
武本 和幸(タケモト カズユキ)
1950年 新潟県生まれ。はんげんぱつ新聞世話人兼編集委員。柏崎刈羽原発反対同盟。測量士・技術士・一級土木施工管理技士・住宅地盤調査主任技士。75年〜99年 刈羽村村議会議員。1964年新潟地震、2004年中越地震、2007年中越沖地震を経験。中越地震・中越沖地震では災害調査や住宅復旧計画に関わる。
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序 章 福島原発を襲った大地震
現実となった原発震災
既設の原子力施設は直ちに運転を停止すべき
第1章 原発震災、福島いわき市からの報告
──福島県いわき市市会議員 佐藤和良
震災後、最初の一週間
原発震災で浴びる放射能汚染
子どもたちをどう守るか
3・11から被曝後の世界に入った
原発を受け入れてきた五〇年
福島原発は廃炉しかない
福島原発は廃炉に、全原発を止めろと、みんな声を上げよう
第2章 破綻した原子力防災
1 原子力災害対策特別措置法の特徴
2 事故想定
3 防災対策を重点的に充実すべき地域
4 オフサイトセンター
5 原子力緊急事態宣言の発出
6 事故情報の中央統制
7 国と自治体の関係
8 予防避難の考え方
9 避難の基準
10 災害要援護者対策
第3章 放射能汚染と向き合うためのQ&A
第4章 原発は地震に備えてきたか
1 地震はなぜ起きるのか
2 活断層とはなにか
3 アスペリティとは
4 地震の揺れについて
5 耐震設計審査指針とは
6 震源を特定する地震動の評価方法
7 「震源を特定せず策定する地震動」とは
8 残余のリスクとは
9 原子炉を設置する地盤はいかにあるべきか
10 地震随伴事象とは
11 バックチェック中間評価結果
12 変動地形学に基づく活断層調査とは
13 活断層の上に立つ原発
14 揺れを増幅する地下構造の上に原発
15 バックチェック結果のその後は
第5章 柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震
1 中越沖地震の概要と計測された地震動
2 止める、冷やす、閉じこめる
3 原発が受けた被害は?
4 基準地震動S2を超えた意味
5 柏崎刈羽の地震・地盤論争
6 地盤の隆起・沈降の意味──地殻変動と地盤破壊
7 隠されていた海底活断層
8 ハギトリ波解析結果