安斎育郎『これでわかるからだのなかの放射能』(合同出版、2011年)
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1979年に初版が出版されたものですが、福島原発事故を機に改訂出版されました。
下記の目次に見られるように、からだのなかにあるさまざまな放射能について詳しく解説しています。第2章では、からだのなかの自然放射能。第3章では、核実験に由来する体内の放射能の解説です。素人にも読みやすく、科学史のエピソードも豊富です。お勧め本です。
体の中の放射能については、この話を悪用して、「もともと体内には自然放射能があるのだから、福島原発事故の放射能など気にする必要はない」と主張する人たちがいます。関東地方と関西地方では自然放射線からあびる量が違うと言った話も悪用されます。
こうした論法について、著者は、明確に批判しています(たとえば59~60頁)。生物学的半減期の話や、人口歯に関しても、だから内部被曝の影響などたいしたことはないといった論法について、「そもそも、被曝しないにこしたことはない放射能」と述べ、「『無害か危険かいずれとも判定しかねる』というのもやはり一種のリスクなのです」(125頁)としています。著者は「予防原則」という言葉を使っていませんが、内容は予防原則と同様です。
第1章 放射能の基礎知識
(1)原子とは
(2)放射能とは
(3)半減期とは
第2章 からだのなかの自然放射能
(1)カリウム
(2)炭素14
(3)トリチウム
(4)ルビジウム87
(5)ウラン物語
(6)ウランの特性
(7)ラジウム物語
(8)ラジウムの特性
第3章 核実験に由来する体内の放射能
(1)ウラン235が核分裂しやすい理由
(2)セシウム137
(3)ストロンチウム90
(4)放射線をガまんする?
(5)核実験による人体被害
第4章 原発事故に由来する体内の放射能
(1)福島原発事故はどんな事故だったか?
(2)スリーマイル島原発2号炉の教訓
(3)チェルノブイリ原発事故による汚染
(4)人類史上類例のない福島原発事故
(5)放射線被曝による障害
(6)5つの放射性核種
あとがきにかえて
安斎育郎(あんざい・いくろう)
放射線防護学、立命館大学名誉教授、安斎科学・平和事務所所長
1940年東京生まれ。1964年、東京大学工学部原子力工学科卒業。工学博士。
東京大学医学部助手を経て、1986年、立命館大学教授。
1995年より国際平和ミュージアム館長。2008年より名誉館長。
2011年、安斎科学・平和事務所開設、同所長。
著書に、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『家族で語る 食卓の放射能汚染』(同時代社)、『福島原発事故——どうする日本の原発政策』(かもがわ出版)ほか多数。
またテレビでは 「人間講座 だます心だまされる心」(NHK)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)ほかに出演。