辛坊治郎・高橋千太郎『放射能の真実!』(アスコム、2011年)
http://www.ascom-inc.jp/book/9784776207009.html
日本人がいまいちばん知りたいのは、
放射能ってどのぐらい怖いのかということ。
そして、先生がいつも「これは大丈夫」「これは危険」と
瞬時にお答えくださったような安心情報です。
そして、高橋先生のご専門は動物生理学。
長年、研究してこられたテーマは、
放射性物質は人体にどれくらい影響するのかという、
まさにいま日本人がいちばん知りたい分野の研究なんですね。
ですから、「放射能の真実」について聞くべき相手は、
日本に京都大学の高橋千太郎先生をおいてほかにいない、
と私は思っているんです。
先生には、ここがわからない、どうなっているんだと、
ガンガン突っ込ませていただきます(笑)。
辛坊治郎
私たちの素朴な疑問と不安を
放射線安全学の第一人者が
すべてこたえます!!
◎どれくらい放射能を浴びたら、健康に影響が出るの?
◎外部被曝をすると、体のどこに、どんな問題が起きる?
◎日焼けと同じく放射線の影響にも個人差はある?
◎規制値すれすれのものを食べ続けたら、どうなる?
◎子どもや胎児、子孫への影響、どこまでわかっている?
◎なぜ「一刻も早く年間1ミリシーベルトに戻せ」か?
◎SPEEDIはなぜスピーディに出なかったのか?
◎なぜ専門家の言うことは、みんな違うのか?
◎必要な「汚染マップ」と「生活安全マップ」とは?
◎「経済力を損なわないように脱原発する」は可能か?
「放射能」について、ここまでわかっている!
以上のように宣伝している本です。「2時間でいまがわかる!」「素朴な疑問と不安にすべてこたえる!!」とあります。やっつけ本とでもいうのでしょうか、220頁ほどの対談です。
高橋千太郎のプロフィル
京都大学農学部農学科卒業後、科学技術庁放射線医学総合研究所研究員、英国医学研究協議会研究員、テキサス大学医学部客員教授、放射線安全研究センター長などを歴任する現在、京都大学原子炉実験所副所長・教授。専門は放射線生物学、毒性学、環境科学をバックグラウンドとした放射線安全学である。
あの、京都大学原子炉実験所副所長、です。今中さんや小出さんのところですが、いわゆる「6人衆」ではなく、推進か容認か知りませんが、「きちんと」出世してきた方です。
話の中に今中さんや小出さんの名前は出てきませんが、ああ、これは彼らを批判しているのだな、とわかるところがいくつか。
短い中に、しきい値の話や、スピーディのこと、そして避難区域のことなど、わかりやすく話しています。
驚いたのは、「放射線防護の基準などが決まった経緯を知っていて、細かい数値まで熟知していて、緊急時の放射線管理や医療措置について十分な知識のあるのは、2~3人じゃないか」ということです。これはご本人を除いて、「ライン」、つまり経産省、文科省、原子力安全委員会、放射線医学総合研究所、原子力研究機構などのことを指しています。そこに2~3人しかいない!!
「私も含めて大学の先生は、ある意味専門バカですから、専門以外のところは役に立ちません。その専門バカを総動員してこの事態にあたるという姿勢が、事故後の早い時期には政府や自治体側になかったように思えます。専門家を活用しつつ適切な判断と実行のできるリーダーがいなかったと。」――これは菅直人批判なのかも。
最後に「放射線防護の世界の基本ポリシー」として「ALARA」(=As Low As Reasonably Achievable アララ)」を紹介しています。「合理的に達成できる範囲で、なるべく低く」です。また、「正当化」と「最適化」も加えて、アララ、正当化、最適化を基本としています。
ICRPの場合、アララにいう「合理的に」の中に、経済的合理性、つまりコスト問題が入るところがミソなのですが、そのことには触れていません。