熊本一規『脱原発の経済学』(緑風出版、2011年)
http://ryokufu.com/isbn978-4-8461-1118-2n.html
緑風出版は自然環境を守るための著作を出版してきましたので、福島原発事故以後も次々と良書を出しています。本書はその一冊。
第1章 電力自由化と発送電分離は必要か
第2章 「原発の電気が一番安い」は本当か
第3章 原発は地域社会を破壊する
第4章 脱原発社会を如何に創るか
脱原発の経済学はすでに何冊も類書がありますが、それぞれの論者ごとに特徴があって、学ぶべきことがさまざまにあります。
著者は、各地のダム、埋め立て、原発問題に直接かかわって、漁民の権利を守るために理論闘争してきた人で、現在は明治学院大学教授。著書に『埋立問題の焦点』『公共事業はどこが間違っているのか?』『海はだれのものか』『よみがえれ!清流球磨川』などがあります。
私にとって、本書で面白かったのは、2点。
第1は、第4章で、「脱原発は必要かつ可能である」として、8つの理由を掲げている中で、「原発は冷戦構造の産物である」と断定しているところです(146頁)。
第2は、脱原発と再生可能エネルギー普及の議論とを切り離して論じているところです。「脱原発と再生可能エネルギーの普及とは全く別物であり、脱原発を主張するのに再生可能エネルギーを持ち出す必要は全くない」(153頁)として、議論の筋道を整理し、両者の議論をそれぞれ展開しているところです。