(朝日新書、2012年)
元・朝日新聞東京本社編集局長、ジャーナリスト、いまは退職して北海道大学大学院研究員の著者の本です。被災地を訪れて取材しながら、並行して文学作品を読み返す試みです。カミュ『ペスト』、カフカ『城』、モラン『オルレアンのうわさ』、井伏鱒二『黒い雨』、スタインベック『怒りの葡萄』などを取り上げ、そこで描かれた主題が震災や、原発事故を経た今、どのように読まれるべきなのかを考えています。冒頭に辺見庸の、震災をカミュの『ペスト』の視点でとらえ返す言葉が引用されています。NHKで語った言葉で、その番組が元になって辺見庸『瓦礫の中から言葉を』が出版されています。辺見庸と外岡秀俊。共同通信と朝日新聞。ともにジャーナリストにして文学者。外岡秀俊は新聞記者になる前にすでに小説家としてデビューしていましたが、記者になってからは小説を書いていないようです。うろ覚えですが、啄木をモチーフにした『北帰行』を30数年前に読みました。阪神淡路大震災では『地震と社会』という本も出しています。私と同じ札幌出身。