Wednesday, November 05, 2014

大阪市はヘイト団体の共犯になるのか

NGOのヒューライツ大阪の情報によると、大阪市人権施策推進審議会の検討部会において<市の施設の使用に関しては、「制限すると表現の自由の侵害につながるおそれがある」という課題を複数の委員が指摘>したそうである。
「専門委員」は下記の人物である。
専門委員たちは<市が公共施設をヘイト団体に利用させてヘイト集会を行わせた場合、市がヘイト団体に協力・加担したことになる>という論点についてどのように検討したのだろうか。
換言すれば、大阪市はヘイト団体と共犯となって、被害者に対するヘイト・クライム/ヘイト・スピーチを行うことになる。
このような事態を日本国憲法が許容しているのだろうか。地方自治体の責務は住民の暮らしと安全を守ることである。「住民」には外国人住民も含まれる。
大阪市が選んだ「専門委員」は外国人住民の基本的人権を侵害してもよいと考えているのだろうか。「専門委員」たちは、なぜここまでして「差別表現の自由」を擁護しなければならないのだろうか。
<地方自治体がヘイト団体に公共施設を利用させてヘイト集会を行わせた場合、市がヘイト団体に協力・加担したことになる>という理解を私は何十回と唱えてきた。大阪府でも大阪市や門真市の市民などが主催した公開集会で何度も指摘した。論文でも書いたし、複数の新聞記事でも取り上げられたし、このブログにも書いてきた。
ホテルの会議室を借りてヘイト集会を開催すれば10万円かかるのに、市の公共施設を利用すれば1万円で開催できたとすれば、市がヘイト団体に9万円の資金援助をしたに等しい。ヘイトデモと違って、公共施設におけるヘイト集会ならば公然性がないので、差別被害は比較的少ないと言える。しかし、差別されるマイノリティが当該施設に行くことが困難になる。何よりも市が加害に加担しているので、被害者は権利保護をどこにも求めることが出来ない。
人種差別撤廃条約第2条は、地方自治体を含む政府に、人種差別を擁護したり支持したりしないことを求めている。
人種差別撤廃条約第4条本文は、政府にヘイト・スピーチを非難することを求めている。この条項を日本政府は留保していない。日本政府が留保したのは4条(a)(b)である。
人種差別撤廃条約第4条(a)は、政府にヘイト団体への資金援助を犯罪とするよう求めている。日本政府は4条(a)の適用を留保しているが、それは「ヘイト団体への資金援助を犯罪とすることを留保している」と言う意味である。「日本政府がヘイト団体に資金援助する」などということがあってはならない。
人種差別撤廃条約第4条(c)は「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」としている。地方自治体が人種差別を助長することがあってはならない。日本政府は4条(c)の適用を留保していないのだから、4条(c)を守るべきである。
人種差別撤廃条約第2条
1 締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため、
a)各締約国は、個人、集団又は団体に対する人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する。
b)各締約国は、いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず、擁護せず又は支持しないことを約束する。
c)各締約国は、政府(国及び地方)の政策を再検討し及び人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。
d)各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。
e)各締約国は、適当なときは、人種間の融和を目的とし、かつ、複数の人種で構成される団体及び運動を支援し並びに人種間の障壁を撤廃する他の方法を奨励すること並びに人種間の分断を強化するようないかなる動きも抑制することを約束する。
人種差別撤廃条約第4条
 締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って、特に次のことを行う。
a)人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動及び人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること。
b)人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を違法であるとして禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が法律で処罰すべき犯罪であることを認めること。

c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと。