「ヘイトデモやめろ!」
「ヘイトデモやめろ!」
「ヘイトデモやめろ!」
猛暑の川崎、綱島街道の両側歩道を埋めたカウンターの市民が叫ぶ。
「ヘイトデモ止めよう!」
「ヘイトデモ止めよう!」
「ヘイトデモ止めよう!」
中原平和公園に向けて、みんなで叫ぶ。
日傘、うちわ、帽子、飲み水は必需品だ。みんな汗だくになりながら、「暑いね」と繰り返しつつ、ヘイトデモ阻止のために歩道に立ち尽くす。
500人以上はいるだろう。歩道の両脇に分かれているのと、幅広く、たむろしている状態なので、正確な人数はわからない。1000人はいなかったと思うが。
顔見知りの市民が各地から駆けつけている。ジャーナリスト、弁護士、研究者も目立つ。
「やつらは遅いね」「東京駅からマイクロバスで来るらしい」「デモの出発点はこのあたりらしい」。
やがて、神奈川県警の広報車から「まもなくこの道はデモ隊が通ります。歩道の方は交通の妨げにならないようにしてください」などとアナウンスが流れる。
とたんに、こちらのマイクから「デモ中止」のシュプレヒコール。
「デモ中止!」
「デモ中止!」
「デモ中止!」
「デモ中止!」
「デモ中止!」
「ヘイトデモは犯罪です。神奈川県警は犯罪を取り締まってください」
みんな声をからしながら叫び、合間に水分補給のくりかえしだ。
1時間もすると頭がボーッとしてきたので、木陰に入り、手ごろな石に腰かけた。
*
石に腰を下ろして一息ついていると、急にカウンターの人だかりが崩れた。
立ち上がって手近な台に上がって見ると、数十人の一団が綱島街道を武蔵小杉駅の方に走っていくのが見えた。その後ろから数百人が追いかけていく。
この暑いのに走るとは元気だな、などと感心しながら、最後尾を歩いていくことにした。
汗だくで武蔵小杉駅東口の手前につくと、カウンター行動の主催者がアナウンスしていた。
「ヘイトデモ隊はマイクロバスでやってきて、記念撮影をするや、すぐに立ち去りました」。
目撃者たちによると、ヘイト犯罪者たちは予定していた出発点から500メートルも離れたところにマイクロバスを止めて、20人ほどがバスから降りると、その場でデモ行進のしぐさをして撮影したという。
「デモをやった」というアリバイ作りのための記念撮影だ。
そこにカウンターの市民が駆けつけたので、ヘイト犯罪者たちはすぐにバスに乗り込んで走り去ったという。
*
カウンターの市民は中原平和公園に戻って集会を開いた。
ヘイト犯罪者たちの行動を目撃した人からの報告があり、続いて崔江以子さんが発言した。
「負けてない。負けてない。負けてない。」
ヘイトデモの予告によってふたたび傷つけられ脅かされたが、カウンターに結集した市民とともに立ち上がった崔さんの発言に、みんな、心を痛めつつ、半ば安堵した面も。
ともかく、徒歩によるヘイトデモは止めた。
ヘイト犯罪者たちは尻尾を巻いて逃げ去った。
ヘイト犯罪者たちは尻尾を巻いて逃げ去った。
「こんな恥ずかしいピンポンダッシュデモを初めて見た」
有田芳生・参議院議員のコメントだ。有田議員は人種差別禁止法の必要性を訴えた。
また、デモの出発地点から500メートル離れたところでマイクロバスを止めて記念撮影をしたのは、神奈川県警による先導があったからだという。マイクロバスの前を走る神奈川県警の車両が目撃されている。
神奈川県警はヘイト犯罪者と連絡を取り合って、予定地点ではなく、離れた場所でバスを止めて記念撮影することを許した。というよりも、現場を把握していた神奈川県警の入れ知恵だろう。ヘイト犯罪者たちには、そうした状況判断ができたはずがないからだ。
今度もまた神奈川県警はヘイト犯罪者たちに便宜を図り、協力した。差別を止めさせる責任のある神奈川県警が差別に加担している。
ここに日本のヘイト問題の本質がある。