スペイン政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/ESP/21-23.
28 November 2014)によると、刑法312条、510条、515条、610条、及び2007年のスポーツにおける暴力、人種主義、外国人排斥、不寛容に関する法がある。「人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に対する包括戦略」に刑法改正草案が含まれ、議会で審議中である。集団又はマイノリティに対する憎悪及び暴力の煽動行為の規制が含まれる。
提案された改正は次の2つの類型である。
第1に、直接間接を問わず、人種主義、反ユダヤ主義、その他イデオロギー、宗教、民族性、他のマイノリティに対する姿勢に基づいて、個人又は集団に対して憎悪又は暴力を煽動する行為。これには、憎悪又は敵意並びにジェノサイドや人道に対する罪の否定の煽動しそうな資料の作成、開発、配布が含まれる。
第2に、個人及び/又は集団に屈辱を与え又は侮辱を示す行為、個人及び/又は集団若しくはその構成員に対して差別的理由から行われた犯罪を正当化又は擁護する行為。
これらの犯罪がインターネット又はその他のソーシャルメディア上で行われた場合は刑罰加重事由となる。当該犯罪を行うために用いられた文書、記録、資料の破棄又はアクセス制限が含まれる。犯罪組織が関与した事案では刑罰が加重される。
裁判官及び裁判所が命令することのできる特別措置として、刑法510条の改正案は、犯罪に用いられた資料等の破棄、削除が盛り込まれている。
「人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に対する包括戦略」には、次の意識啓発の要素が含まれる。政党が、人種又は民族的出身、信念又は信仰の支持を理由として、人々の集団を犯罪者と一般化又は特徴づけることを避けるよう勧告すること。政党が、公開の議論において、軽蔑的、人種主義的、差別的言語を用いることを避けるよう勧告すること。差異、平和共存、調和を理解し尊重する政治的議論、平等への権利の尊重を助長する議論を促進すること。差別、拒絶又は暴力を公的に非難すること。
平等処遇・差別防止委員会は、2011年5月、「選挙運動期間の差別、人種主義又は排外的演説の回避」を決議した。決議には「移住者についてポピュリズム的、排外的、デマゴギー的演説」を回避することも含まれる。
人種差別撤廃委員会はスペイン政府に次のように勧告した(CERD/C/ESP/CO/21-23.
21 June 2016)。マスメディアやソーシャルメディアにおけるさまざまなマイノリティに関する否定的なステレオタイプがある。犯罪報道においてメデチィアが被告の民族的人種的出身に言及する傾向がある。独立公正な機関を設置、又は既存の機関を再編して、マスメディアやソーシャルメディアにおけるステレオタイプを克服するための特別措置を取るよう勧告する。人種佐部悦撤廃条約4条及び7条に合致して、憎悪や人種差別の煽動と闘うメディアの責任ある利用を促進するよう勧告する。
なお、スペイン政府の前回報告書について、前田『ヘイト・スピーチ法研究序説』617頁。