Tuesday, May 28, 2019

ヘイト・スピーチ研究文献(136)人権保障のネット空間づくりへ


川口泰司「ネット社会と部落差別の現実」『コリアNGOセンターNews Letter』51号(2019年)


著者は山口県人権啓発センター事務局長。「寝た子を起こすな」論は通用せず、「寝た子はネットで差別的に起こされる」状況にあります、という確信犯である差別主義者が「部落地名総鑑」をネット上で公開しているからだ。さらに地名だけでなく「部落人名総鑑」もある。「鳥取ループ」「示現舎」がバラまいた「総鑑」のコピーサイトが存在し、身元調査や土地差別調査に悪用されている。差別投書や、住所や電話番号を晒す等の被害が起きている。

「鳥取ループ」「示現舎」に対する訴訟のために裁判支援サイト(ABDARC)を立ち上げ、イベント・学習会を開催している。ネット差別の解消のため、部落差別解消法やヘイト・スピーチ解消法を経た現在、ネットパトロール、人権保障のネット空間づくりが進められているという。

Sunday, May 26, 2019

鹿砦社・松岡利康さんへの返信

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Sunday, May 19, 2019

"ヘイト&組合弾圧"と闘うための大学習会


ヒゲ戸田パギやん共謀企画

6/7"ヘイト&組合弾圧"と闘うための大学習会」  



 日時:6/7 () 1830開場、1900開始~2100まで 

 会場:浪速区民センター (地下鉄千日前線「桜川駅」から徒歩7分)

    https://www.osakacommunity.jp/naniwa/access.html

    大阪市浪速区稲荷2丁目43 /電話:06-6568-2171



 参加費:無料(☆会場で千円程度のカンパをお願いします)

      (前田朗の著書「ヘイト・スピーチ法 研究原論」持参の方はカンパ不要)



◆「反ヘイトの行政・国政をつくっていく実践論」

 講師:前田朗教授(反ヘイトの国際的・実践的研究者。国連でも発言多数)

       「ヘイト・スピーチ法 研究原論」著者     



 特別報告:

◆「弁護士から見たヘイトと労組弾圧の現状・現場」

 ・仲岡しゅん弁護士(戸籍上は男性だが女性として弁護士登録。切れ味鋭い活動展開)

 ・中井雅人弁護士(大阪労働者弁護団、連帯労組弾圧弁護団)



連絡先

E-mail:tamazo@fanto.org

Tel: 090-8146-1929「コラボ玉造」

四半世紀の腐敗と停滞を思う


映画『主戦場』を観た。


同僚だったかわなかのぶひろがイメージフォーラム映像研究所の責任者だった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/かわなかのぶひろ


映画は評判に違わぬ好作品だ。

慰安婦の事実を否定する歴史修正主義者が無責任な言動を連ねる。これに対して歴史学者や法学者を始め、慰安婦問題に取り組む人々が反論する。これをつなぐ監督の台詞がスピーディで、徐々に迫力を増していく。多様な観点、多様な事実、多様な立場を意識しつつ、観る者に自ら判断させる組み立てだ。

登場人物の半数以上が旧知の人物なので、その都度、「おっ、次は何を言うのか」と楽しみながら観ることが出来た。

良い映画なので大いに勧めたい。


ただ、ここで言われていることは、四半世紀前に言われていたことと変わらない。

例えば、「奴隷が財産を持っているのか」「自由があれば奴隷ではないのか」といった話は1990年代に、かつてのアメリカ黒人奴隷を取り上げて論じていたことだ。奴隷が財産を持っているのはむしろ当たり前のことだ。奴隷が結婚し、独立家屋に居住し、子どもを作り、黒人教会に通っていたのは、当たり前のことだ。奴隷に子どもができるということは、奴隷主の財産が増えることだから、推奨されることなのだ。奴隷身分の買い戻しが認められていたのは、奴隷が蓄財して、自由人になるための手立てだ。奴隷は財産を持てた。こうした当たり前のことを、四半世紀たっても語らなければならない。

議論の中身は全く変わっていない。変わったのは日本の社会意識だ。事実を否定し、およそ考えられない非常識を堂々と語る歴史修正主義が、この国の権力を簒奪し、メディアを支配し、デマを全国に広めてきた。ひたすら嘘をついて、日本の歴史と伝統を誇り、日本は素晴らしいと豪語し、同時に他者を貶める傲慢なレイシストがこの国のメディアに跋扈し、社会意識を左右している。

あまりにも議論のレベルが低くて情けなくなる。

だからこそ、この映画がつくられなければならなかった。だからこそ、一人でも多くの人々にこの映画を観てもらいたい。

Saturday, May 18, 2019

ヘイト・スピーチの本格的比較法研究


奈須祐治『ヘイト・スピーチ法の比較研究』(信山社、2019年)




待望の本格的比較法研究である。

これまでのヘイト・スピーチ法研究(特に憲法研究)は、アメリカの法の状況について偶然入手した断片的な情報を元に大胆に断定するレベルの研究が多い。私は2冊の本でこう指摘してきた。

そうした中、ドイツ法(特に刑法学)、イギリス法、フランス法等について一定の水準の外国法研究・紹介の積み重ねができてきた。しかし、そこでは、ある一国の法律状況を紹介するのが通例であった。立法を紹介する、判例を紹介する、学説を紹介する。その総合ができている研究はまだ少なかった。まして、複数の外国法の状況を比較するレベルにはなかなか達していなかった。

奈須は、アメリカ、カナダ、イギリスの状況を紹介する。しかも、立法、判例、学説に広く視線を送り、詳細かつ丁寧に研究する。アメリカの立法史についての研究は多数あるが、アメリカ史に十分さかのぼった研究はなかった。イギリスやカナダの紹介もあるが、奈須は連邦だけでなく州レベルの法の紹介も行う。

なぜこの3カ国なのか。奈須は「いずれもコモン・ロー系の国」であり、「同じ英語圏の立憲民主政をとる先進国」であり、判例及び学説の蓄積があることをあげている。つまり、直接比較することが意味を持つ3カ国である。大陸法系の国の立法や判例の比較には、より慎重な手続きが必要となる。

500頁を超える大著であり、各国の法状況の詳細かつ精緻な研究のため、読み進むにも時間がかかり、しかも一度読んだだけでは十分咀嚼できない。

個別には、アメリカではヘイト・スピーチ規制は非常に困難であるという従来の通念が、決して誤りではないものの、単純化の所産であることが明らかにされていることを始め、数多くの発見があり、まさに読み応えのある1冊である。

日本については、30人を超える法学者の見解をまとめている点で有益である。もっとも、日本における立法と理論の今後という点ではまだ踏み込んだ議論は十分提示されていない。奈須理論の骨格はほぼ推測できるが、詳細は次の奈須論文に期待することになる。是非読みたい。

とにかくヘイト・スピーチ法だけで500頁もの本格的研究を出版するだけで、とんでもなく意欲的で挑戦的である。近日中に再読して、書評を書こう。

Sunday, May 12, 2019

西岡力、櫻井よしこの「捏造」疑惑


植村裁判取材チーム編『慰安婦報道「捏造」の真実――検証・植村裁判』(花伝社、2018年)



誰が、何を、「捏造」したのか

法廷で明かされた“保守派論客”の杜撰な言論

櫻井よしこ・西岡力が事実を歪曲し、世論をミスリードした慰安婦問題

「事実」をめぐる論戦はまだ続く


1 問われる「慰安婦報道」とジャーナリズム

2 個人攻撃の標的にされた「小さなスクープ」

3 櫻井よしこが世界に広げた「虚構」は崩れた

4 西岡力は自身の証拠改変と「捏造」を認めた

5 櫻井と西岡の主張を突き崩した尋問場面

6 「真実」は不問にされ、「事実」は置き去りにされた

7 植村裁判札幌訴訟判決 判決要旨(201811月9日)


「慰安婦」問題を取り上げた植村隆(朝日新聞記者・当時)の記事は、金学順さんの経歴、「慰安婦」になった経緯を誤報した。事実を書かず、事実でないことを書いた、しかも義母の便宜供与によって事実を歪めて書いた。それゆえ「捏造」である。――2014年に大騒動となった「慰安婦」記事捏造問題は、実はまったく逆に西岡力、櫻井よしこによる「捏造」であった。この驚くべき事実を、本書は見事に解明している。


西岡と櫻井は、金学順さんの1991年のカムアウト、記者会見、及び訴状をもとに、植村記者が事実を歪めて書いたと主張した。例えば櫻井は次のように書いた。

「訴状には、14歳のとき、継父によって40円で売られたこと、3年後、17歳のとき、再び継父によって、北支の鉄壁鎮というところに連れて行かれて慰安婦にさせられた経緯などが書かれている。

 植村氏は、彼女が継父によって人身売買されたという重要な点を報じなかっただけではく、慰安婦とは何の関係もない『女子挺身隊』と結びつけて報じた。」

西岡と櫻井は、植村記者に「捏造」とのレッテルを貼り、大宣伝した。これにより週刊誌やインターネット上では、捏造記者・植村に対する非難の嵐となった。植村は就職が決まっていた大学教授の地位を失い、家族のプライバシーを侵害され、社会的に抹殺されそうになった。

これに対して、植村は己の名誉と家族の安全のために、反撃に出た。「私は捏造記者ではない」。そして、西岡と櫻井それぞれを相手に名誉毀損裁判を起こした。

裁判において明らかになったのは、植村の記事は事実を正確に紹介したこと、これに対して、西岡と櫻井の記事はおよそ事実からかけ離れていたことであった。

2018年3月23日札幌地裁での尋問である。

川上(原告代理人弁護士)「訴状には『継父によって』という記載がない、これは間違いないですね」

櫻井「はい」

川上「『40円で』という言葉も訴状には出ていないことも間違いありませんね」

櫻井「はい」

川上「『売られた』という単語も入っていませんね」

櫻井「はい」

川上「あるいは、訴状には、『継父に慰安婦にさせられた』との記載もありませんね」

櫻井「はい」

川上「訴状には、『継父によって人身売買された』との記載もありませんね」

櫻井「はい」


金学順が継父によって人身売買されて慰安婦となったという櫻井や西岡の主張には何ひとつ根拠がなかった。二人の「創作」である。櫻井と西岡は、自分たちの「創作」に基づいて、植村に「捏造」との非難を浴びせたのだ。このことを本書はていねいに明らかにしている。本書の結論は明快である。

「櫻井の言説こそ『ジャーナリストとしてあってはならない』ものではないのか。」

「自ら法廷で示した定義によって、西岡力は自らが『捏造学者』であることを立証した、と言っても過言ではない。」

両名の尋問記録が収録されているので、読者は迫真の「捏造暴露」過程をを読むことができる。



 

Friday, May 10, 2019

桐山襲を読む(8)第三書館版・パルチザン伝説


『パルチザン伝説・コペンハーゲン天尿組始末』(第三書館、1984年)

作者桐山の意志に反して出版された、海賊版である。

1983年10月の『文藝』に「パルチザン伝説」が掲載された。『週刊新潮』10月26日号が「第二の風流夢譚事件か?」をあおり、右翼が河出書房新社に押しかけ、河出は単行本にしないことを「約束」してしまった。桐山はやむをえず作品社からの出版計画を進めたが、先行して第三書館が桐山の意志に反して出版した。

また、第三書館版は、文学作品としての小説の出版ではなく、「最後のタブー=天皇に挑戦!! 昭和IS OVER!!」と打ち出し、座談会「コペンハーゲン天尿組始末」、高野孟「天皇Xディ--昭和が終わる時」、ドキュメント「天皇戒厳令の街から」などと併せて1冊とした。政治文書としてのパルチザン伝説である。

第三書館版は1984年3月、桐山自身の作品社版は1984年6月の出版。


さらに、桐山による『「パルチザン伝説」事件』は1987年である。



1983年の事件はニュースで見たように記憶していたが、はっきりしない。1987年の『「パルチザン伝説」事件』を読んで、2冊のパルチザン伝説が出ていることを知り、生協書籍部で第三書館版を購入して読んだ。当時作品社版を手にしていない。事件のニュースを見たという記憶も怪しい。『「パルチザン伝説」事件』に収録された資料を読んだ記憶と混同しているかもしれない。

Wednesday, May 08, 2019

脱植民地化運動としての琉球民族の遺骨返還運動


「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」主催

 19回公開シンポジウム(琉球開催)

「脱植民地化運動としての琉球民族の遺骨返還運動」                



 2018124日、京都地方裁判所において「琉球民族遺骨返還請求事件」が提訴され、201938日に第一回、517日に第二回の口頭弁論が行なわれる。また、2019年3月18日に台湾大学から百按司墓琉球人遺骨33体を含む63体の遺骨が沖縄県に返還された。本研究会ではこれまで本件に関する研究集会を開催してきたが、その研究成果として201810月に松島泰勝『琉球 奪われた骨遺骨に刻まれた植民地主義』岩波書店、20192月に松島泰勝・木村朗編著『大学による盗骨』耕文社が発刊された。本シンポにおいて、本件に関する訴訟、研究成果を踏まえて、どのように琉球民族の遺骨返還運動が日本による琉球の植民地支配と、脱植民地運動に結びついているのかを多様な角度から熱く議論したい!



期 日:2019年6月2(日)14:00~17:00(開場13:30)

会 場:琉球大学文系講義棟215教室

資料代:300円(非会員のみ) ※事前申し込みは不要です。



●プログラム●

Ⅰ 共同代表からの開会のご挨拶(14:00~14:15)

高良鉄美(琉球大学名誉教授)



Ⅱ 個別報告(14151615

琉球遺骨問題の歴史的、社会的、国際的背景

前田  朗(東京造形大学教授)

宮城隆尋 (琉球新報記者)

与那嶺功(沖縄タイムス記者)



琉球民族遺骨返還請求訴訟原告として訴える

亀谷正子(琉球民族遺骨返還請求訴訟原告)

玉城  毅(琉球民族遺骨返還請求訴訟原告)

松島泰勝(琉球民族遺骨返還請求訴訟原告団長)



琉球民族遺骨返還訴訟支援団として訴える

具志堅隆松(ガマフヤー)

与那嶺義雄(琉球人遺骨返還訴訟を支える会/琉球・沖縄共同代表)

根保  清次(琉球人遺骨返還訴訟を支える会/琉球・沖縄共同代表)

玉城  和宏(琉球人遺骨返還訴訟を支える会/琉球・沖縄事務局長)

渡口  正三(琉球人遺骨返還訴訟を支える会/琉球・沖縄事務次長)

       休    憩  (16151630

Ⅲ 質疑応答(16301655

本シンポのまとめと今後の実践について(165517:00) 松島泰勝



ご不明な点等がございましたら以下までお願いいたします。

松島泰勝(龍谷大学):matusima@econ.ryukoku.ac.jp,075-645-8418

※会場については、

池上大祐(琉大、事務局):east.asian.community.okinawa@gmail.com 090-1352-5208

Tuesday, May 07, 2019

桐山襲を読む(7)世界の始まりから終わりまで


桐山襲『亜熱帯の涙』(河出書房新社、1988年)

初めて読む作品だ。

7ヶ月続いた日照りから逃れるためにサバニをこぎ出した比嘉ガジラーチンと恋人のウパーヤは伝説の青い泉のある島に辿り着く。白い砂浜はすべて人間の骨でできていた。黒い仮面をつけて上陸した2人は島に広場を作り、大通りを作り、島の各地を探検し、日時計を作り、暮らしの基礎を固めていく。やがて島に辿り着いた人々とともに、畑を作り、町を作る。

島では人々の暮らしが穏やかに続くが、比嘉ガジラーチンが巨人化したり、ウパーヤを先頭に女達が狂乱に陥り火災で死んでいく。島は祝祭空間だからである。やがて村長と警察署長が訪れ、権力がそびえ立つ。権力は島の外からやってきた。

比嘉ガジラーチンが年老い、ウパーヤが他界した後、2人の子どもである比嘉ガジュラール・ガジュラールと恋人のユーナがもう一つの精神世界を築きはじめるが、島には外部から分身が流れ込み、支配が強化され、租税が始まり、肥大化した権力は女達を軍隊の慰安婦に送り出す。軍隊が島に秩序をもたらす。腐敗した狂乱の島のジャングルにこもった比嘉ガジュラール・ガジュラールとユーナたちは革命軍<希望への道>を組織し、蜂起するが、軍隊によって逮捕、処刑されてしまう。革命は失敗に終わるが、2人は<希望への道>が継承されていくことを信じる。

ついには島は外国軍に攻撃され、すべての住民が死に絶える。後には人間の骨で出来た白い砂浜が残される。人間の造形による町や広場は消滅していくジャングルの奥の洞窟に比嘉ガジュラール・ガジュラールとユーナの記憶と願いと希望への道が残される。

「時の流れの止まった場所、世界から見放された暗い場所で、尾てい骨をつなぎあわせた二人の子供が、微かに動き始めた。」

物語はこうして終わる。遙か彼方のいつの日か、海の向こうから次のサバニが比嘉ガジラーチンとウパーヤを運んでくるだろう。

桐山はここで創世記作家となり、伝奇小説作家となり、終末譚を提示する。

パルチザン伝説をはじめとする作品では、1960~70年代の日本の現実を素材に、100年の歴史を遡行して、物語を組み立ててきた桐山だが、本書では一転して、モデルなき神話的世界を自らの想像力で綴った。夢と祝祭と狂気と暴力のあふれる世界を描き出した。

サバニ、マブイ、アダン、ギンネム、パパイヤ・・・と、沖縄をモチーフにした神話的世界だが、沖縄の歴史やおもろそうしとは切り離されている。登場人物はいかなる民族であるかは明示されないが、マイノリティとして抑圧される朝鮮人が登場する。つまり日本でありながら、日本でない、どこでもない、そうした島の歴史である。

Monday, May 06, 2019

戦後ジャーナリズムにおける松井やよりと増田れい子


根津朝彦『戦後日本ジャーナリズムの思想』(東京大学出版会、2019年)


<ジャーナリズムはいかにあるべきか.1945年の敗戦以降からの戦後日本ジャーナリズム史研究の領域を確立し,メディアが多様化する現代に対して,戦後の日本社会におけるジャーナリストたちが創造的な言論・報道を体現していく歴史をひもとき,ジャーナリズムの思想的財産を解き明かす.>

書店で手にとって、著者の名前はなんとなく記憶にあるなとか、よくあるジャーナリズム史論かなと思いつつ、買おうかどうしようか悩んだ。通史ではなく、重点的に描いている。そのほうが突っ込んだ議論になっているかもしれない。「第II部 ジャーナリズム論の到達点」で「ジャーナリズム論の先駆者・戸坂潤」を取り扱っているのが気になった。戸坂潤を「ジャーナリズム論の原点」ではなく「ジャーナリズム論の到達点」としている。いかなる含意なのか。

と思いながら目次を辿ると、荒瀬豊や原寿雄を論じているが、それに続いて、「第6章 「戦中派」以降のジャーナリスト群像」に「三 男社会における女性記者たちの試練」という項目が眼に入った。

なんと松井やより、吉武輝子、増田れい子、矢島翠を扱っている。主に松井やよりと増田れい子。400頁の本に僅か16頁とはいえ、女性記者を位置づけている。

「矢島翠が天皇制の問題を通じて記者をやめる一方で、後の二○○○年に女性国際戦犯法廷で天皇の戦争責任にも向き合っていくことになるのが松井やよりであった。」との一文もある。

著者は「あとがき」で「一番読んでもらいたい章」が第六章だという。戦後日本のジャーナリストの問題意識と志を扱っているからだ。というわけで本書を購入した。

著者の名前を以前に見たのは『季刊戦争責任研究』で「8.15社説における加害責任」の分析をしていたからだ。

これから読もう。