オランダがCERDに提出した報告書(CERD/C/NLD/22-24. 4 March 2019)
憲法1条は宗教、信念、政治的見解、人種又は性別その他の理由による差別を禁止している。人種について刑法第137条cと137条dが言及しているように、条約第1条に掲げられた意味で、つまり皮膚の色、世系、国民的民族的出身等の意味で理解される。
民主主義社会では社会問題について開かれた議論が重要であり、憲法および国際人権条約に従って考慮される。表現の自由は幅広く理解される。近年、政治家が訴追された事例があるが、表現の自由の限界を超えたと検察官が判断した場合である。政治家に対する中傷や差別ゆえに有罪となった公務員もいる。
政府は、ヘイト・スピーチと特徴づけられる表現の形式に明確な線を引いている。被害の重大性ゆえにヘイト・スピーチに有罪判決を言い渡すための提案を増加させている。量刑を高めることによって、政府は中傷され差別されている側、その存在に脅威を受けていると感じる側に立つことを強調している。憎悪と暴力の煽動に刑罰を加重することは刑法典に取り入れられることになるだろう。
オンライン・ヘイト・スピーチは警察や反差別当局に通報され、国家機関であるオンライン差別担当官に告発される。差別的内容のコンテンツを通報できる。通報を受け取った場合、当該コンテンツがまだオンラインにあるかどうかをチェックし、当該コンテンツが刑法137条や137条dに当たるか否かを判断する。当たると判断すればウエブサイト運営者に削除を要求する。繰り返し要求しても無視された場合、検察官に通報する。当該通報を受け取った検察官は刑事手続きを開始することができる。ヘイト・スピーチ事案の処理のため、検察官は欧州レベルのソーシャルメディア・プラットフォームの取り決めを考慮する。
前回報告書には判例など詳細な情報が列挙されていたが、今回は省略されている。
オランダ政府報告書の審査は、新型コロナ禍のため延期された。