曽我部真裕「ネット上のヘイトスピーチは規制できるか」『都市問題』111号(2020年)
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ドイツやフランスにおける規制法やアメリカにおける規制論議を見つつ、日本ではどうするべきかと問う。特定個人・集団の権利利益を侵害するヘイト・スピーチについてはすでに規制が可能であるので、主に、集団的ヘイト・スピーチそのものに向けた対応として、解消法や各地の条例があるが、他方でネット事業者の取り組みがあるという。「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」があり、海外事業者には独自の方針がある。
2020年6月1日、ネットと人権研究会が「インターネット上の人権侵害情報対策法モデル案」を公表した。曽我部はモデル案を評価しつつ、具体的な内容についてはなお議論すべき点が多々あるとして、ヘイト・スピーチの定義の明確性や、ログの保存義務に課する負担の適正性を指摘する。さらに、「委員会が人権侵害が『あると信じるにつき相当な理由がある』にとどまる段階で削除要請が可能で、プロバイダがそれに事実上拘束されるという枠組みの是非」を指摘する。
「ドイツのSNS法のように、自主的な第三者機関を設けるように誘導する仕組みも考慮に値するのではないだろうか」として、「保守速報」への広告出稿の減少や、アメリカでのフェイスブックへの広告ボイコットの例を挙げる。
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ネットと人権研究会については
https://cyberhumanrightslaw.blogspot.com/
プロバイダー責任制限法改正