Saturday, June 04, 2022

フェミサイド測定のための統計枠組み01

国連統計委員会第53会期(2022314日)に、フェミサイドの統計に関する報告書が提出された。

国連麻薬犯罪事務所と国連ジェンダー平等・女性エンパワーメント部局作成『女性と少女のジェンダー関連殺害(「フェミサイド/フェミニシド」とも呼ばれる)を測定するための統計枠組み』である。

以下でごく簡潔に紹介する。

冒頭に要約が掲げられている。

「本文書は、女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を測定するための包括的統計枠組みをめざす。こうした殺害の統計上の定義に加えて、枠組みが、女性と少女のジェンダー関連殺害の類型論、及び、こうした殺害の多様な形態を確定・集計するために用いられるべき変数のリストを確定する。提案された定義と類型論は、「統計目的のために犯罪の国際分類(ICCS)」の構造と枠組みを整理するもので、それゆえこうした犯罪に関する個別国家の法律から独立して整理する。この枠組みは、女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)の被害者、実行犯及び国家対応に関する情報を提供するために、収集されるべき主なデータを確定する。」

目次

 序文

 目的

 背景

 主要概念

a 故意の殺人

b 女性と少女に対するジェンダーに基づく暴力(女性と少女に対する暴力)

 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)の概念枠組み

 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を測定するための包括的統計枠組み

a 概念枠組みを統計に変換する

a 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)の統計的定義

a 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を集計するための情報群

c  女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)確定のための殺人統計の中核変数/特徴

d  分析目的のための要素

Ⅶ 国内統計制度の意味

Ⅷ ジェンダー関連暴力に関連するその他の暴力による死亡

a 教唆された自殺

Ⅸ 統計目的のために犯罪の国際分類(ICCS)との連結

付録1 すでにICCSに含まれている変数に追加(又は修正)される、ジェンダー関連殺害を測定するための統計枠組みの要素

Ⅰ 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)確定のための中核変数

Ⅱ 分析目的のための変数

付録2 すでにICCSに含まれている、女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)測定のための統計枠組みの変数

Ⅵ章では、a,a,a,c,dとなっていて、やや混乱している。

Ⅰ 序文、Ⅱ 目的、Ⅲ 背景は、フェミサイドが研究されるようになってきた経緯、拝啓、その目的の確認である。

Ⅳ 主要概念

a 故意の殺人

ICCSによると、故意の殺人とは「死又は重大な傷害を惹起する意図をもって人に加えられた不法な死」である。3つの基準で判断する。

i 他人による、ある人の殺害(客観的基準)

ii 被害者を殺す、又は重大な傷害をする実行犯の意図(主観的基準)

iii 殺害の不法性(法的基準)

b 女性と少女に対するジェンダーに基づく暴力(女性と少女に対する暴力)

1993年の女性に対する暴力撤廃国連宣言によると、女性と少女に対する暴力とは、「ジェンダーに基づく暴力であって、その社会的役割について女性と男性の間に構造的伝統的に永続化された力の不平等に原因を有するもの」である。

Ⅴ 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)の概念枠組み

関連する概念は法制度によって異なる。ICCSの故意の殺人と女性と少女に対する暴力概念の定義を考慮すると、4つの基準になる。

i 他人による、ある女性の殺害(客観的基準)

ii 被害者を殺す、又は重大な傷害をする実行犯の意図(主観的基準)

iii 殺害の不法性(法的基準)

iv 殺害のジェンダー関連動機

ジェンダー関連動機は、一般的には、男性の女性に対する資格や特権、男性性の社会規範、男性による支配や権力、ジェンダー役割の強制、許容できないとみなされる女性の行動の予防や処罰というイデオロギーのようなジェンダー関連要因に基づいて行われた殺害に関連する。

女性と少女のジェンダー関連殺害の多くは、現在または元のパートナー、又はその他の家族によって行われる。パートナーによる女性殺害は、許容できないとみなされる女性の行動の予防や処罰に結びつくことが多い。父親、兄弟、叔父など家族による殺害は、社会規範や文化規範に由来し、名誉殺人やダウリー殺人のような有害な伝統的慣行が含まれる。

フェミサイドは、被害者と実行難の間の不平等な権力関係のある関係性の中で生じる。実行犯が被害者の医師、看護士、教師であるとか、警察官、公務員、聖職者の場合がある。