Thursday, June 30, 2022

ナチス賛美との闘い――テンダイ・アチウメ報告書01

国連人権理事会50会期に、テンダイ・アチウメ人種差別問題特別報告者の報告書(A/HRC/50/61. 23 May 2022)が提出された。

アチウメ特別報告者は、昨年の国連人権理事会48会期に報告書(A/HRC/48/77. 13 September 2021)を提出した。その概要は紹介済である。

ナチス賛美との闘い――ホロコースト否定犯罪を考える

https://maeda-akira.blogspot.com/2021/10/blog-post_25.html

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そこでは、アルバニア、アルゼンチン、アルメニア、ブラジル、ブルンジ、クロアチア、キューバ、キプロス、ドミニカ共和国、エクアドル、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、イラク、イスラエル、イタリア、キルギスタン、マルタ、メキシコ、ナミビア、オランダ、ニジェール、ノルウェー、カタール、モルドヴァ、ロシア、セネガル、セルビア、スペイン、スウェーデンの情報が紹介された。今回はその続きとなる。一部重複があるが、以下簡潔に紹介する。

アチウメ報告者は、冒頭で、ロシアのウクライナ攻撃について、ネオナチからの住民保護を名目としているが、ネオナチからの保護を理由とした軍事攻撃は正当化されないとことを確認している。

1 アルバニア

2010年の差別からの保護に関する法律(法律10221号)が平等と非差別の原則の履行を規制する。2020年、法改正によって、交差する差別、複合差別、構造的差別、ヘイト・スピーチ、隔離、セクシュアルハラスメント、差別の煽動といった新しい差別形態が盛り込まれた。差別の重大な形態には刑罰が二倍とされた。

同胞を管轄するコミッショナーは、個別の申立てを受理する。2021年に人種差別の申立てについて15件の決定と1件の勧告を出した。最も多いのは公共サービスの提供における差別である。例えばロマとエジプト人の子どもの就学前教育。エジプト出身者へのメディアを利用した差別的表現。ロマやエジプト人の家屋住居の公認の遅延。

2021年、ヘイト・スピーチの申立ては7件あり、2件をヘイト・スピーチと認定した。1件は、ある宗教指導者が、LGBTIに対するヘイト・スピーチを行った。もう1件は政治家発言である。2件が人種主義暴力につながった事実は確認されていない。

裁判所に移送された件がある。ティラナ市役所と警察が、ある市民に対して、人種、民族、経済状態に基づいて間接差別を行った。ティラナ行政第一審裁判所は、被告らに2,504,467レクを被害者に支払うよう命じた(1レク=0.788円(20123月))。

2 アゼルバイジャン

人種、民族、宗教その他の理由に基づく差別について、憲法第25条はすべての者の平等の権利を保護する。刑法第1541項は、その権利や利益に害悪を惹起する方法で市民の平等を損なった場合の刑事責任を定める。マスメディア法第10条は、禁じられた情報や、暴力や残虐行為のプロパガンダ、違法行為を行う目的でのマスメディアの利用を禁止する。

ファシズムの台頭は許されないので、第二次大戦の歴史の歪曲は阻止されなければならないと、アゼルバイジャンは強調する。

3 ベラルーシ

ベラルーシ国民はナチスによる最も危険な歴史を体験した。ナチス矢差別行為をしっかりと非難し、人種差別撤廃条約第4条に定められた行為の予防と処罰に必要な措置を採用した。政治、社会、文化的寛容を促進し、国際人権基準に基づいた政策を採用している。

法の下の平等の枠組みを定め、すべての者の文化の自由な発展を期している。「国民の尊厳の侮辱」、宗教に基づく差別、マイノリティ集団に対する直接差別と間接差別、憎悪と暴力の煽動を禁止する。

2010119日の大統領命令は、過激主義に反対する法律、ナチスの復権の予防法律、ベラルーシ人民のジェノサイド法を含む。

ベラルーシは寛容の促進と、ナチス、過激主義、差別の再発予防のため、2022年を「歴史記憶の年」とした。

4 ホンデュラス

人種的優越性に基づく憎悪と暴力の煽動と闘う法的枠組として、憲法の平等の権利と差別の禁止があり、2020年の刑法は、差別と、差別の煽動を犯罪化した。2016年、先住民族とアフリカ系ホンデュラス人の統合のため、反レイシズムと反差別の政策を採択した。

平和教育文化庁は、公務員に対して、差別に対処する職業上の責任について研修を行っている。ヘイト・スピーチ予防のための行動をとる研修も行っている。

77件の差別事案が起きて、その多くがアフリカ系住民へのものである。申立てられたのは公務員である。10件が裁判にかけられ、6件は却下された。1件は行政記録に残すため分析中であり、その他は捜査中か、証拠不十分である。

ヘイト・スピーチ対策のため、市民社会団体と協力して、権利の担い手の能力形成、差別予防の教育課程、差別に関する学問研究を進めている。差別防止のための人権教育が11,075に殿公務員、42,236人の法執行官に行われた。

5 ハンガリー

ナチスや人種主義暴力と闘う法的措置を有している。人種主義暴力の煽動や、国家社会主義時代の犯罪の公然否定を犯罪化している。ヘイト・スピーチに関連して、2011年の基本法は、ハンガリー・ユダヤ人コミュニティを社会の一部と認定した。政府命令10392019は、国際ホロコースト記憶連合の反ユダヤ主義の定義を採用した。

反ユダヤ主義のヘイト・スピーチとヘイト・クライムに対処するため、欧州行動・保護連盟を設置し、2011年、義務教育にホロコースト教育を導入した。

欧州行動・保護連盟は2020年に30件の反ユダヤ主義の事件を記録した。1件は脅迫、6件は暴力行為、22件はヘイト・スピーチである。2013年から2020年にかけて事件数は減少している。

6 ラトヴィア

ラトヴィアでは右翼過激主義による脅迫行為が続き、インターネットも利用されている。平等と非差別のために、憲法、及び労働、健康、子ども保護、経済活動、教育、刑事手続きの法が制定されている。ヘイト・スピーチや暴力の煽動に対して、憲法は言語、民族、文化的アイデンティティの保護を明示し、刑法は、差別、ジェノサイド、人道に対する罪、憎悪の煽動の禁止に反する行為を犯罪としている。2021年、刑法改正により、人種、民族その他に基づく憎悪をすべての犯罪の刑罰加重事由とした。

内務省令は、ヘイト・クライムに対処する際の手続き上の諸問題を検討する作業部会を設置し、作業部会が報告書を作成した。

国家警察学校は、ヘイト・クライムの認定と捜査のためのガイドラインを作成した。警察官のためのヘイト・クライム研修を行い、オンライン・ヘイト犯罪への対処をしている。

201620年、差別や憎悪扇動が警察によって121件認知された。その多くは民族的又は国民的出身に基づく差別である。同時期、国家安全サービスは、ジェノサイド、、

ジェノサイドの勧誘、ジェノサイドと人道に対する罪の免罪、憎悪扇動に関する111件の申し立てを認知し、その多くはインターネットへの書き込みであった。

ラトヴィアは「国民のアイデンティティ、市民社会及び統合政策の実施計画2019-2020」を定めた。欧州評議会の国民的マイノリティ保護枠組み条約の当事国である。