Ⅵ 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を測定するための包括的統計枠組み
a 概念枠組みを統計に変換する
a 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)の統計的定義
a 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を集計するための情報群
c 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)確定のための殺人統計の中核変数/特徴
d 分析目的のための要素
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Ⅵ 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を測定するための包括的統計枠組み
a
概念枠組みを統計に変換する
ジェンダー関連殺害を集計するには、女性殺害のデータから、ジェンダー関連動機のあるものを選び出す基準を必要とする。だが女性殺害の統計がそのための要素を考慮に入れていないため困難が伴う。それゆえ、それぞれの殺害を記録する客観的特徴の定義がなされる必要がある。フェミサイドの指標は8つの基準となる特徴で示すことになる。
i 殺害被害者には、殺害者によって行われた身体的性的心理的暴力/ハラスメントの前歴があった。
ii 殺害被害者が、違法な搾取の諸形態の被害者であり、例えば人身売買、強制労働又は奴隷制の被害者であった。
iii 殺害被害者が誘拐され、又は違法に自由を剥奪された状態であった。
iv 被害者が性産業で働いていた。
v 被害者に対する性暴力が、殺害の前後に行われた。
vi 殺害に被害者の身体の傷害が伴った。
vii 被害者の身体が公共空間に棄てられた。
viii 女性と少女の殺害がジェンダーに基づくヘイト・クライムに該当する。例えば、彼女が標的とされたのは、実行犯の側に女性に対する特別の偏見があったがゆえである。
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これらの変数は、原則として、故意の殺害の中でフェミサイドを確認するために用いられるが、各国の統計制度では必ずしも用いられていない。
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a 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)の統計的定義
データを収集し、統計を作成するために、フェミサイドはパートナーによって行われた女性被害者の殺害、家族によって行われた女性被害者の殺害等と定義される。
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a 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)を集計するための情報群
上で述べた概念枠組みは統計枠組みに変換される。統計枠組みは3つの情報群から成る。
i パートナーによって殺された女性と少女
ii 家族によって殺された女性と少女
iii ジェンダー関連動機で、その他の実行犯によって殺された女性と少女
家族以外で、被害者に権限を持つ、あるいは被害者を保護する実行犯等による女性殺害の中にも関連する場合があり、次の8つのうち1つに当たるかどうかを見ることになる。
i 殺害被害者が、実行犯による身体的性的心理的暴力/ハラスメントの前歴を有する。
ii 殺害被害者が、違法な搾取の諸形態、例えば人身売買、強制労働又は奴隷制の被害者であった。
iii 殺害被害者が、誘拐され、又は違法に自由を剥奪された状態であった。
iv
被害者が性産業で働いていた。
v 被害者に対する性暴力が、殺害の前後に行われた。
vi 殺害に被害者の身体の傷害が伴った。
vii 被害者の身体が公共空間に棄てられた。
viii 女性と少女の殺害がジェンダーに基づくヘイト・クライムに該当する。例えば、彼女が標的とされたのは、実行犯の側に女性に対する特別の偏見があったがゆえである。
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「実行犯による身体的性的心理的暴力/ハラスメントの前歴を有する」というのは、被害者がそのように報告したことがある場合を含む。当局が他の情報源からそうした情報を得た場合も含む。
「違法な搾取の諸形態の被害者」というのは、殺害以前に被害者が人身売買の被害者であった場合を指す。
「誘拐され、又は違法に自由を剥奪された状態であった」というのは、被害者がその意思に反して違法に拘禁されたり、違法に連行されたり、法的保護者から引き離された場合を指す。
「被害者が性産業で働いていた」というのは、性産業で働いていた女性が故意の殺人の被害者である場合を指す。
「性暴力が、殺害の前後に行われた」というのは、法医学検査によって、殺人前後に、被害者が性暴力を被っていた場合を指す。被害者のものではないDNAが検出された場合が含まれうる。
「殺害に被害者の身体の傷害が伴った」というのは、身体攻撃するのに道具が用いられた場合、ナイフや銃を用いた場合など。
「身体が公共空間に棄てられた」というのは、女性被害者の身体が公共空間に意図的に移動させられた場合である。路上、市場、住宅地、公共交通機関、学校等、商業施設等。
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c 女性と少女のジェンダー関連殺害(フェミサイド/フェミニシド)確定のための殺人統計の中核変数/特徴
フェミサイドの統計を作成するため、実行犯と被害者の関係、故意の殺害の文脈に関連する特徴を記録する必要がある。
1.
パートナー
2.
家族(親族、婚姻関係、養子)
3.
被害者に権限を有する、又は保護する関係。友人/知人・職場の関係。
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d 分析目的のための要素
フェミサイドの確定のために必須ではないが、分析のために重要な要素。
被害者の要素――年齢、婚姻状態、市民権、暴力/ハラスメントの前歴、薬物乱用、経済状態、性的指向、妊娠、障害、民族性
実行犯の要素――性別、被害者との関係、年齢、薬物乱用、経済状態、累犯、制限命令を受けたこと
事件の要素――犯罪発生地、犯罪現場、殺害のメカニズム、日時、国内法上の犯罪該当性