ネパール政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/NPL/17-23.
20 February 2017)。
憲法第17条は意見の自由、表現の自由、集会の自由、政党結成の自由などを保障するが、これらの自由は一定の制約を受けることがある。様々のカースト、民族、宗教、又は共同体の人々の間の調和を危険にさらす行為、人種差別の煽動、不可触の煽動行為に合理的制約を課す法律を制定することができる。憲法第19条はマスコミの権利を定めるが、様々のカースト、部族、共同体の人々の間の調和を貶めたり、不可触の煽動やジェンダー差別の煽動を行うことを保障していない。
憲法第17条は、地域に敵意を煽り、異なるカースト集団、民族、宗教集団の間の調和を危険にさらし、暴力を煽動する組合、結社、政党に制約を課す。政党が特定のカースト、言語、宗教の構成員にだけ党員資格を認めたり、排除することを制約する。
2002年の政党法第5条は、様々な部族、カースト、共同体の間の調和を危険にさらす行為を行う政党を禁止する。特定の宗教、宗派、部族、カーストだけの政党は選挙委員会が受理しない。
1959年の名誉毀損・中傷法は、カーストや職業に対する名誉毀損を犯罪とし、刑罰及び被害者への賠償を定める。1993年の国営放送法第11条は、すべての部族、言語、階級、地域、宗教の間の平等と調和を高める番組を優先するよう定める。同法第15条は、部族、言語、宗教、文化を誤解させ、貶め、中傷する広告の放送を禁止する。
1991年の印刷出版法第14条は、様々なカースト、部族、宗教、階級、地域、共同体の人々の間に敵意をつくり出す出版物を制約する。同法第16条は同じ性質の外国出版物の輸入を制約する政府命令を出すことができるとする。
1969年の動画法は、異なるカーストや部族の間の調和を害する動画の制作及び配布を禁止する。
人種差別撤廃委員会のネパール政府への勧告(CERD/C/NPL/CO/17-23.
29 May 2018)。
人種憎悪やカーストに基づく憎悪が判決における刑罰加重事由であるかどうかの情報がない。人種主義ヘイト・スピーチ事件に関する統計がない。人種主義宣伝や組織を適切に監視していないという報告がある。人種憎悪やカーストに基づく憎悪が犯罪動機の場合に刑罰加重事由とすること。法執行官がヘイト・クライム/スピーチを適切に認知、記録、捜査、訴追、制裁しうるようにすること。共同体レベルで、カーストに基づく憎悪を根絶するため啓発と対話を行うこと。次回報告書において、被害者のカーストや民族性によって被害が大きくなるヘイト・クライム/スピーチの統計を提供すること。条約第4条についての留保を撤回すること。