前田朗・黒澤知弘・小出裕章・崎山比早子・村田弘・佐藤嘉幸
『福島原発集団訴訟の判決を巡って――民衆の視座から』(読書人、2019年)
本体:1000円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/4924671401
https://honto.jp/netstore/pd-book_29699090.html
https://books.rakuten.co.jp/rb/15932921/
脱原発を実現するために全国で闘っている仲間たちへ
万感の思いを込めてお届けするメッセージの花束!
まえがき/前田朗
判決の法的問題点/黒澤知弘
巨大な危険を内包した原発、それを安全だと言った嘘/小出裕章
しきい値なし直線(LNT)モデルを社会通念に!/崎山比早子
原発訴訟をめぐって――民衆法廷を/村田弘
なぜ原発裁判で否認が続くのか/佐藤嘉幸
質疑応答
あとがき/佐藤嘉幸
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まえがき
3・11から八年の歳月が流れました。乳幼児が小学校に通う年代になり、幼いと思っていた子どもたちが大人びてくるのに十分な歳月です。
あの日、大震災の驚愕と放射線被曝の恐怖にうち震えながら自宅を離れ、故郷を奪われ、家族がバラバラにされ、仕事も学校も友達も地域社会も奪われた被災者、避難者は、どのような思いでこの年月を過ごしたことでしょう。
事実を否定し、責任逃れを続ける電力会社の傲慢な姿勢や、避難者を切り捨てる日本政府の冷酷な棄民政策に直面するたびに、避難者はいかに心を切り刻まれたことでしょう。
それでも思いを新たにして、心をつなぎ合わせて立ち上がる避難者が全国に多数います。ともに生きる社会をつくり、人間らしい暮しを取り戻すために、汗を流し、涙を流しながら、事態を打開しようと懸命に闘う人々がいます。
二〇一九年二月二〇日、横浜地方裁判所の「勝訴判決」を獲得した福島原発かながわ訴訟原告団、弁護団、支援する会は、人間の尊厳を賭け、命と暮らしを守り、この国に民主主義を復活させるために、次の一歩を踏み出すことになりました。その取り組みとして、横浜地裁判決を読み解き、次の闘いを構築するためのシンポジウムを開催しました。
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「福島原発集団訴訟の判決を巡って――民衆の視座から」
日時:二〇一九年四月二〇日
会場:スペース・オルタ(新横浜)
主催:福島原発かながわ訴訟原告団、福島原発かながわ訴訟を支援する会(ふくかな)、平和力フォーラム、脱原発市民会議かながわ
協賛:一般社団法人市民セクター政策機構、スペース・オルタ
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本書はこのシンポジウムの記録です。
最初に、かながわ訴訟弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士から「判決の法的問題点」を解説してもらいました。
続いて、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんから「巨大な危険を内包した原発、それを安全だと言った嘘」として、原発問題の基本を論じてもらいました。
医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子さんからは「しきい値なし直線(LNT)モデルを社会通念に!」として、原発訴訟を勝利に導くための提言をしてもらいました。
そして、福島原発かながわ訴訟原告団団長の村田弘さんから「原発訴訟をめぐって――民衆法廷を」として、国家の権力法廷の限界をいかに超えるかを語ってもらいました。
最後に、『脱原発の哲学』の著者である佐藤嘉幸さんから「なぜ原発裁判で否認が続くのか」として、避難者切り捨てのメカニズムを解析してもらいました。
小さなブックレットですが、執筆者一同、脱原発を実現するために全国で闘っている仲間たちに万感の思いを込めてお届けするメッセージの花束です。各地で活用していただけることを願います。
執筆者を代表して
前田 朗