阿部浩己『国際法を物語るⅡ 国家の万華鏡』(朝陽会)
近代国家という構築物の上にさらに積み重ねるように構築されてきた国際法を、国際関係や国家の論理だけでなく、人権の論理も導入しながら、読み解き、読み替える作業が続く。国家の管轄権や、国家の責任や、個人の責任といった各レベルの問題を通じて、現代国際法の変容を明らかにしている。
平和の碑(少女像)について、在外公館の不可侵とは何かを冷静に検討している。日韓の対立をいきなり論じるのではなく、在外公館をめぐる過去の国際法の思考をたどり、その中に位置づける試みである。
人権論を基軸とした国際法の方法論の意義がよく理解できる1冊である。
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1 国家と主権―「イスラム国」の残響
2 領域主権と国境管理
3 自己決定権と沖縄
4 エストニアと強制失踪
5 外国国家を裁けるか ―国家免除という桎梏
6 国家管轄権の魔法陣①
7 国家管轄権の魔法陣② ―権能から義務へ
8 在外公館の不可侵 ―「平和の少女像」
9 国家責任のとり方 ―「慰安婦」問題
10 国際裁判の展開
11 国際法を守らせる仕組み
12 国際法と災害
13 核兵器禁止条約と国際法