阿部浩己『国際法を物語るⅠ ―国際法なくば立たず―』(朝陽会、2018年)
国際人権法の第一人者の最新刊である。
『国際法の人権化』『国際人権を生きる』『国際法の暴力を超えて』『テキストブック国際人権法』等多数の著作を出してきたが、本書は「物語る」とあるように、概説書や研究書というよりも、一般向けの読み物風に工夫を凝らした入門書である。『時の法令』に連載しただけあって、入門書と言っても、読み応えのある、読者に考えさせる著作となっている。
阿部の国際法学は、何よりも、人権論から国際法を編み直す問題意識と方法論に特徴がある。国際政治の力学、権力関係に付き従うのではなく、人間の尊厳、人権の論理を注ぎ込んできた。
本書でも、マイノリティ、ジェンダー、第三世界などの視点も織り込んでいる。国際法とは何か、そして国家とは何か、を主題としながらも、支配する側の視点だけではなく、多面的多角的に検討を加えている。どの章でも一度は、読みながらニヤッと微笑んでしまう、そうした国際法の本に初めて出会った。
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1 国際法と出会う
2 国際法の歴史を物語る
3 国際法と日本
4 国際法の描き方
5 国際法は「法」なのか
6 国際法の存在形態
7 国家について考える① 領域とは何か
8 国家について考える② 永住的住民
9 国家について考える③ 政府と独立
10 国家について考える④ 国家承認の法と政治
11 台湾は国家なのか
12 謎の独立国家ソマリランド
13 不思議の国バチカン
14 国家の消滅 ―沈みゆく環礁国