Thursday, June 06, 2019

国際法のダイナミズムを学べる読み物


阿部浩己『国際法を物語るⅠ国際法なくば立たず』(朝陽会、2018年)



国際人権法の第一人者の最新刊である。

『国際法の人権化』『国際人権を生きる』『国際法の暴力を超えて』『テキストブック国際人権法』等多数の著作を出してきたが、本書は「物語る」とあるように、概説書や研究書というよりも、一般向けの読み物風に工夫を凝らした入門書である。『時の法令』に連載しただけあって、入門書と言っても、読み応えのある、読者に考えさせる著作となっている。

阿部の国際法学は、何よりも、人権論から国際法を編み直す問題意識と方法論に特徴がある。国際政治の力学、権力関係に付き従うのではなく、人間の尊厳、人権の論理を注ぎ込んできた。

本書でも、マイノリティ、ジェンダー、第三世界などの視点も織り込んでいる。国際法とは何か、そして国家とは何か、を主題としながらも、支配する側の視点だけではなく、多面的多角的に検討を加えている。どの章でも一度は、読みながらニヤッと微笑んでしまう、そうした国際法の本に初めて出会った。


1   国際法と出会う

2   国際法の歴史を物語る

3   国際法と日本

4   国際法の描き方

5   国際法は「法」なのか

6   国際法の存在形態

7   国家について考える領域とは何か

8   国家について考える永住的住民

9   国家について考える政府と独立

10  国家について考える国家承認の法と政治

11  台湾は国家なのか

12  謎の独立国家ソマリランド

13  不思議の国バチカン

14  国家の消滅沈みゆく環礁国