桐山襲『未葬の時』(作品社、1994年)
*
『文藝』1992年夏号に掲載され、1994年に単行本として出版された。著者は1992年3月に永眠している。
*
親族たちに一礼をする火葬係の思いを描写することから本書は始まる。「死んだ人間と生きている人間たちとは隔てられたのだ」。
ホールの大理石の床。
坊主の読経。
釜の中の炎。
夫を亡くした喪主である女。
焼けるまでの小一時間の火葬係の記憶の反芻。
待合室の女と弟。
親戚達。
秋の匂い、金色の枯葉、舞い上がる金色の滝。
煙突からふっと押し出されて風に乗った男のたま。
まだ生きている者と風に乗って流される者の、未葬の時。