Thursday, January 23, 2020

ヘイトスピーチ研究文献(144)在日コリアン弁護士協会の闘い


金竜介・姜文江・在日コリアン弁護士協会編

『在日コリアン弁護士から見た日本社会のヘイトスピーチ』(明石書店、2019年)

https://www.akashi.co.jp/book/b482100.html



「人種差別がない社会は、永久に来ないのかもしれない。しかし、人種差別を許さない社会を実現することはできるはずだ。」(金竜介)



『ヘイトスピーチはどこまで規制できるか』に続く、在日コリアン弁護士協会LAZAKのヘイトとの理論的かつ実践的な闘いの書である。
13人の弁護士達が、ヘイトスピーチの被害、ネット上のヘイト対策、歴史的背景、朝鮮学校の民族教育、この間の判例、地方自治体条例などを分担して執筆している。特に、在日コリアン弁護士に対する大量懲戒請求という差別と嫌がらせに対する当事者としての闘いの記録が注目される。

この10年間、被害当事者、弁護士達、研究者、ジャーナリスト、カウンターの市民が取り組んできた反ヘイト運動の成果をまとめた1冊と言えよう。



日本は、国家が差別を煽動し、ヘイト集団が暴れ、一般市民も差別に巻き込まれ、容認している珍しい社会だ。

国際社会に目を転じれば、差別もヘイトもなくなっていないし、反差別政策も決して十分とは言えないが、少なくとも「人種差別を許さない社会」が当たり前になっていると言ってよい。

本書の13人は弁護士であると同時に、ヘイトの被害者でもあり、さらに大量懲戒請求によって業務妨害の被害も受けている。二重三重の被害に敢然と立ち向かう著者達に敬意を表したい。