国連事務総局報告書『女性、平和、安全保障』の紹介。
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Ⅱ 女性、平和、安全保障の10年の目標――人権を保護し、人権を擁護する者の人権を保護する
世界中で、女性人権活動家を沈黙させ、公的生活への参加を妨害するために標的とされている。過激な政治集団、軍事クーデタ、非憲法的な政府変更が、人権活動家をより危険にさらしている。国連安保理事会は女性人権活動家と団体を保護する措置を取るよう呼びかけてきた。2022年、安保理事会は平和・安全保障過程への女性参加に対する報復に焦点を当てるはじめての公式会合を開いた。
2021年、国連人権高等弁務官事務所は、紛争8か国における女性人権活動家、ジャーナリスト、労働組合員の殺害29件を確認した。しかし、この数値は大幅に過小評価されたものと考えられる。例えばコロンビアだけで、国連人権高等弁務官事務所は、人権活動家や団体への脅迫や攻撃につき1,116件の申し立てを受理した。その3分の1が女性に対するもので、12人の女性人権活動家が殺され、そのうち7人が先住民族女性である。イエメンでは、紛争当事者が、政治活動する女性や性的マイノリティを迫害している。シリアの活動家によると、家族に偽造写真が送られたのちに自殺した事例がある。スーダンでは、多くの女性が暴力、恣意的逮捕、拘禁されている。アフガニスタンでは、多くの活動家が拘禁され、ハラスメントを受け、殺害・失踪した例もある。2022年1~2月、女性の権利を求める抗議行動に参加した4人の女性が逮捕された。数週間連絡がつかなかったが、国連の要請の後に釈放された。ミャンマでは、軍隊が数百人の女性活動家を殺した。女性人権活動家、大学生、LGBTIQの人権活動家、ジャーナリスト、インフルエンサーである。
女性人権活動家に対する攻撃は報告されない事例が多い。一般に、女性は男性よりも性的・ジェンダー的暴力を受けやすく、言葉による虐待、監視、オンライン暴力を受けやすい。すべての活動家が中傷、中傷キャンペーン、オンライン・ヘイト・スピーチ、ヘイト・スピーチを受けるが、女性人権活動家に対する攻撃は、特にその個人的行動、道徳的行動や性生活を標的とされる。性的・リプロダクティブ・ヘルスの擁護者は極端なスティグマと暴力にさらされる。リプロダクティブ・ヘルス情報・サービスに対する厳しい法律が、リスクを拡大させる。女性人権活動家を攻撃したものは、差別的法律によって励まされる。LGBTIQの権利擁護者はその活動ゆえに標的とされる。障害を持つ女性も特別なリスクにさらされている。
2018年以来、「女性、平和、安全保障NGO作業部会」の援助を受けて国連安保理事会に情報提供した女性の3分の1以上が報復攻撃にさらされた。国連ジェンダー平等女性エンパワーメント局は2021年1月から2022年5月に安保理事会に情報提供した女性の市民社会代表について調査したところ、32人のうち9人が報復を受けたという。ある女性によると、国連通報に協力した同僚が逮捕・拘禁され、2人とも国外に逃げたという。今日も彼女はリスクを恐れて人権活動ができない。ある著名な女性人権活動家は、通報の後、政府からTV映像を見せられ、父親や同僚たちが彼女を誹謗中傷するように仕向けられていたという。
危機にある女性人権活動家は財政へのアクセスにも制約がある。この溝に対応して、2022年、「女性平和・人道基金」が設立され、すでに女性人権活動家への資金援助を始めた。
平和作戦の四半期報告によると、女性人権活動家に対する侵害を安保理事会に情報提供することが重要な役割を有している。2021年、14の平和作戦が安保理事会に報告された。コロンビア国連確証団の報告によると、人権活動家の殺害に性的理由が見られた。一定の民族集団やLGBTQIのリーダーが標的とされている。
国連は女性人権活動家を保護するすべての可能な措置を取らなければならない。脅迫に対処する迅速な措置も含まれる。近年、国連は。公的非難を発し、危機にある女性人権活動家を訪問し、女性人権活動家のネットワーク設立を支援している。リビアでは、国連はソーシャル・メディア企業と協力して、女性人権活動家に対する偽情報やヘイト・スピーチと闘っている。コロンビアでは、少なくとも4,000人の女性リーダーが国連女性連盟の支援を得ている。
2021年にターリバーンが政権を奪って以後のアフガニスタンからの避難のように、女性人権活動家に対する国際社会の支援戦略は不適切なままである。安全性がないため、多くの女性活動家は空港に行くことを抑制せざるを得ず、家族と一緒でなければ避難できなかった。非難を待っている間に殺害された女性もいる。アフガン女性へのインタヴューによると、平和や民主主義のための支援よりも、軍隊への支援が多い。
数千人のアフガン女性の避難を支援した国がいくつかある。カナダは、「危機にある女性支援計画」を策定し、難民化した女性活動家の支援を優先した。
女性人権活動家の支援措置には、避難場所、一時的避難場所、ジェンダーに関連する迫害ゆえに、保護される地位、すみやかな財政支援が必要であり、それぞれの状況に応じて、文脈を考慮して提供されねばならない。