的場昭弘『資本主義全史』(SB新書)
https://www.sbcr.jp/product/4815615277/
<資本主義の歴史とは「過去」と「現在」
そして「未来」の歴史である
西欧で生まれた資本主義が、拡大し、そして暴走している。資本主義はなぜ限界にむかっているのか。資本主義と持続可能な世界は両立するか。ポスト資本主義とは何か。本書では世界史の流れの中で、資本主義の変遷をたどることより、これまで自明のものとしてあった資本主義の本質をつかむ。予測不可能な未来を切り開くために必須の教養が身につく一冊。>
序章 資本主義とは何か
第1章 資本主義という社会がそれまでの社会とどう違うか
第2章 資本主義の始まり――19世紀のヨーロッパ
第3章 産業資本主義から金融資本主義への移行
第4章 戦後の経済発展と冷戦構造――資本主義対社会主義
第5章 資本主義の勝利へ――グローバリゼーションの時代資本主義を読み説く
第6章 暴走する資本主義――ソ連・東欧の崩壊から金融資本主義へ
第7章 資本主義のゆらぎ――リーマンショック後の世界
終章 資本主義の後に来るもの
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マルクス学の第一人者として知られる的場は、このところ資本主義の全体像を描き、「世界史」に挑んでいる。本書の次には、『「19世紀」でわかる世界史講義』(日本実業出版社)を世に問うている。
https://www.njg.co.jp/post-37596/
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本書『資本主義全史』前半は、西欧資本主義の形成と展開をマルクス『資本論』に依拠しつつ、著述している。後半は、ソ連東欧崩壊以後の現代史を、グローバリゼーション、ネオリベラリズム、暴走する資本主義、リーマンショック後の世界という流れで著述する。方法論はマルクスだが、的場歴史学・経済学の展開である。マルクスの世界史認識の方法を用いて、現代世界史を読み解く試みである。
リーマンショックとは何であったのか。その政治経済的意味をアメリカのみならず、世界史的に位置づけるなら、西欧型資本主義の限界に気づくことになる。中心諸国はともかく、周辺諸国においては国家破綻が現実のものとなる。ギリシアのデフォルトが典型例であるが、それはただちにEUの危機である。危機に直面したEU諸国の政治経済の新展開が、ナショナリズムとポピュリズムを呼び起こし、アメリカも巻き込まれていく。オバマからトランプへの転換である。
対抗勢力は中国を先頭にしたアジア諸国である(日本はむしろアメリカ追随だが)。半周辺帝国主義の登場により、西欧の没落が現実化する。200年の近代史を貫いてきた西欧による政界支配の終焉はどのような道をたどるだろうか。
的場は預言者ではないので、資本主義の後に来るものについて具体的なシナリオを提示しているわけではない。西欧型資本主義からアジア型資本主義への流れは必然であり、政治、経済のみならず、文化、思考においても大いなる転換が予想される。西欧型の競争主義からアジア型の互恵主義への移行が実現するだろうか。そうだとしても長い歴史のスパンの話だ。
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いずれにしても、西欧資本主義の没落を予兆的、先進的に具体化しているのが日本だろう。この30年間の横ばい、停滞、そのためにさらなる極度のアメリカ追随という歪んだ政治経済は、西欧資本主義の近未来のリトマス試験紙になるのかもしれない。世界を知り、日本を知るために役に立つ1冊だ。
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的場昭弘『待ち望む力』(晶文社)
https://maeda-akira.blogspot.com/2013/08/blog-post_8.html
的場昭弘『「革命」再考――資本主義後の世界を想う』(角川新書)
https://maeda-akira.blogspot.com/2017/03/blog-post_20.html
的場昭弘『未来のプルードン――資本主義もマルクス主義も超えて』(亜紀書房)