Sunday, May 29, 2016

ヘイト・クライム禁止法(112)ボスニア・ヘルツェゴヴィナ

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ政府が人種差別撤廃員会に提出した報告書(CERD/C/BIH/9-11. 18 November 2013)によると、人種差別撤廃委員会は、前回報告書審査の結果、ヘイト・スピーチとヘイト・クライムに対処する刑法を強化し、寛容と、異なる民族集団、宗教集団の平和的共存を図る措置を講じるよう勧告を受けていた(前田朗『ヘイト・スピーチ法研究序説』602頁)が、憲法第2条は、意見・表現の自由を保障している。だが、かつてヘイト・スピーチの最悪の結果を経験した。民族憎悪、殺害、民族浄化をあおる言論は言論の自由ではない。倫理綱領があるにもかかわらず、個人や集団に対する脅迫を表明するプレスがある。意識的に倫理綱領に反するジャーナリストもいる。自主規制機関であるプレス委員会の決定も無視される。名誉毀損法が2002年に施行され、ジャーナリストやメディアに対する訴訟が増えた。ところが、法は迅速手続きを要請しているのに、名誉毀損ゆえの損害賠償請求訴訟が不合理に長引いている。判決の数は少ない。
コミュニケーション法によりコミュニケーション規制局設置されている。規制局はラジオや放送だけでなく、インターネットも対象としている。規制局は表現の自由を保護し、ジャーナリストの反倫理的姿勢を規制し、専門倫理ルール違反に制裁を科す。罰金は150,000BAM以下である。再犯は300,000BAM以下。2011年、規制局はすべての規則をEUメディア・サービス指令に合わせた。
プレス委員会は2000年に、欧州評議会決定1636に従って設置された自主規制機関である。その任務は、ジャーナリストの専門職に反する行為から公衆を保護し、表現の自由を保護することである。
報告書の対象期間に、コミュニケーション規制局は、放送におけるヘイト・スピーチに関する10件の申立てを受け取った。1件はヘイト・スピーチと認定され、TV局に罰金が科せられた。9件はヘイト・スピーチ規定に違反していないと判断された。