Monday, February 03, 2020

ヘイト・クライム禁止法(164)モーリシャス


モーリシャス政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/MUS/20-23. 3 October 2017)によると、2001年に独立放送庁が設置され、ラジオとテレビ放送を監督している。モーリシャス文化の多元性を維持・促進するため、放送番組に言語的及び文化的多様性をもつようにすることが目的である。独立放送庁の基準委員会は「放送行動綱領」を作成し、その前文は放送権個人の権利と不可分であり、情報を受け取り発進する個人の自由権に基づくとしている。放送局は「公衆の道徳に対するいかがわしい、猥褻な、攻撃的な番組や、宗教信仰を攻撃する番組、国家の安全と公共秩序を脅かす番組を放送してはならないとしている。独立放送庁は不服委員会を設置し、行動綱領に違反し、不公正な取り扱いをしたとの申立てを受理する。

2009年5月から2016年12月に警察が報告・訴追した人種差別と人種憎悪の煽動事案は、次のとおりである。公共及び宗教上の道徳に対する侮辱は14件、人種憎悪の煽動は16件、宗教儀式の妨害は10件、冒涜は2件、コミュニケーション技術法違反は4件。

人種差別撤廃委員会はモーリシャス政府に次のように勧告した(CERD/C/MUS/CO/20-23. 19 September 2018)。条約第1条及び第4条に関する一般的勧告第8号を考慮に入れて、現存する集団の分類を行うこと。民族及びカーストの階層構造が存在するにもかかわらず、法制度がこれを反映していない。人種やカーストに基づいた優越性の主張がなされている。人種差別事件が報告されているが、裁判所が扱った数が限定されている。人種差別被害の申立てに関する統計が提供されていない。クレオールと呼ばれる民族集団のステレオタイプ化の事件、ヘイト・スピーチ事件がみられる。一般的勧告第35号を想起し、ステレオタイプ化と闘う教育・啓発を強化すること。人種主義的報道と政治家によるヘイト・スピーチ事件と闘うのに必要な措置を講じること。警察による人種プロファイリングをやめること。検察、検察、裁判所がヘイト・クライムやヘイト・スピーチを確認、登録、捜査、訴追できるように、法執行官に人種差別について研修を行うこと。