ボスニア・ヘルツェゴヴィナが人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/BIH/12-13. 13 September 2017)によると、ジェンダー平等法と差別禁止法があり、すべての生活領域における差別を禁じている。2016年に差別禁止法を改正してLGBTも保護対象にするために、性的志向とジェンダー・アイデンティティを加えた上、「性的特徴」という要件も追加し、包括的な差別禁止法にした。
2016年に刑法を改正し、ヘイト・クライムを、人の属性、皮膚の色、宗教信念、国民的民族的出身、言語、ジェンダー、障害、性的志向又はジェンダー・アイデンティティゆえに行われた刑事犯罪と定義し、刑罰加重事由とした。刑法166条2項(c)は、憎悪ゆえに行われた殺人を1年以上10年以下の刑事施設収容とした。刑法203条4項は、強姦罪について憎悪が伴えば3年以上15年以下の刑事施設収容とした。刑法293条3項は、憎悪による他人の財産損壊を1年以下の刑事施設収容とした。
スルプシュカ共和国は、刑法改正作業中であるが、これは人種主義と排外主義を犯罪化するためで、「暴力又は憎悪の公然教唆及び煽動」を対象としている。印刷、ラジオ、テレビ、コンピュータシステム又はソーシャルネットワークを通じて、公開集会又は公共の場所その他公然と、暴力又は憎悪を惹起し、教唆した場合、3年以下の刑事施設収容である。
刑法は子どもの性的虐待と搾取も犯罪化している。子ども性的虐待、子どもとの性行為、子どもポルノ等を犯罪化した。
2013年以来、スルプシュカ共和国内務省は、憎悪動機による犯罪の記録を取っている。憎悪、不和、不寛容の煽動、他人の財産損壊について、実行者、標的とされた人、場所、日時、実行方法を記録している。
コミュニケーション法に基づいて独立機関としてコミュニケーション規制局が設置されている。表現の自由の講師を目的とし、差別とヘイト・スピーチの禁止に関しても取り扱う。テレビ番組における「ヘイト・スピーチ」の疑いがあるという申立てを多数受け取ったが、2県ではテレビ局に2000BAM及び4000BAMの罰金と判断した。
人種差別撤廃委員会はボスニア・ヘルツェゴヴィナに次のように勧告した(CERD/C/BIH/CO/12-13. 10 September 2018)。人種的動機を刑罰加重事由とすること。人種主義プロパガンダの流布や人種的優越性の思想の助長が犯罪とされているかどうか不明であるので、条約第4条に関z年に合致するよう刑法を改正すること。一般的勧告第35号を想起して、公的言論における人種主義ヘイト・スピーチを強く非難すること。公的演説が人種憎悪の煽動にならないようにすること。ヘイト・スピーチとヘイト・クライムを記録、捜査し、裁判にかけることで法律を実効化すること。ジャーナリストやメディア関係者の人権教育のための行動計画を通じて、メディアがこの問題に敏感になるようにすること。