告 発 状
2021年8月27日
東京地方検察庁 御中
被告発人
氏名 安倍晋三
職業 衆議院議員
生年月日 1954(昭和29)年11月12日
住所 山口県
氏名 配川博之
職業 団体職員
被告発人
住所 山口県
氏名 阿立豊彦
職業 安倍晋三後援会会計責任者
第1 告発の趣旨
被告発人安倍晋三、被告発人配川博之及び被告発人阿立豊彦の後記第2-1・2・3の所為は、刑法60条、政治資金規正法第25条1項3号(収支報告書虚偽記入罪)に該当する。
よって、上記の被告発人らにつき、厳重な処罰を求め、告発する。
第2 告発の事実
被告発人安倍晋三(以下、「被告発人安倍」という)は、2017(平成29)年10月22日施行の第48回衆議院議員選挙に際して山口県第4区から立候補し当選した衆議院議員、被告発人配川博之(以下、「被告発人配川」という)は、安倍晋三後援会(以下、「後援会」という)の代表者、被告発人阿立豊彦(以下、「被告発人阿立」という)は、後援会の会計責任者であった者であるが、被告発人安倍、被告発人配川及び被告発人阿立は、共謀の上、2020(令和2)年12月23日、
1 平成30年5月24日山口県選挙管理委員会に提出していた後援会の平成29年分の収支報告書について、真実は、前年からの繰越額が13,253,034円ではなかったにもかかわらず、前年からの繰越額7,240,705円との記載を、6,012,329円増額して13,253,034円と虚偽の訂正をし、
2 令和1年5月27日山口県選挙管理委員会に提出していた後援会の平成30年分の収支報告書について、真実は、前年からの繰越額が11,884,752円ではなかったにもかかわらず、前年からの繰越額7,773,479円との記載を、4,111,273円増額して11,884,752円と虚偽の訂正をし、
3 令和2年5月27日山口県選挙管理委員会に提出していた後援会の令和1年分の収支報告書について、真実は、前年からの繰越額が12,634,184円ではなかったにもかかわらず、前年からの繰越額10,029,276円との記載を、2,604,908円増額して12,634,184円と虚偽の訂正をし
たものである。
第3 告発に至る経緯
1 第一次告発
2020(令和2)年5月21日、法律家621人が、2018(平成30)年4月20日開催された「安倍晋三後援会 桜を見る会前夜祭」に関して、被告発人安倍、被告発人阿立及び被告発人配川を政治資金規正法第25条1項2号(収支報告書不記載)の罪で、また被告発人安倍及び被告発人配川を公職選挙法249条の5第1項(寄附)の罪で東京地検に告発し、大きく報道された。その後も、同じ内容の告発は続き、告発人は最終的に997人に達した(第1次告発)。
2 東京地検特捜部の捜査に関する報道
同年11月23日の読売新聞を皮切りに、東京地検特捜部の上記告発に係る被疑事実についての捜査内容が広く報道され始めた。
報道によれば、被告発人安倍が国会答弁で一貫して否定していた後援会による前夜祭の飲食代の補填の事実を、後援会が認めたとのことであった。
また、
①
2013(平成25)年の前夜祭初回から毎年、補填分は被告発人安倍の資金管理団体である晋和会(以下、「晋和会」という)がホテルに対し現金で支払っていたこと、
②ホテルから毎年、晋和会宛ての領収証が発行されていたこと、
③被告発人安倍側はこれら領収証を廃棄していたこと
などが報道された。
3 第二次告発
こうした報道を受け、第1次告発をした法律家のうち10名余は急遽、2020(令和2)年12月21日、第2次告発に踏み切った。
その内容は、
①前夜祭に関する後援会の収支報告書不記載につき、第一次告発にかかる平成30年分の収支報告書に限らず、平成27年分、平成28年分、平成29年分及び令和1年分の全ての行為の告発
②前夜祭の宴会料の寄附につき、第一次告発にかかる平成30年4月開催の前夜祭に限らず、公訴時効にかからない平成31年4月開催の前夜祭に関する全ての行為の告発
③晋和会の会計責任者である被告発人西山猛及び同会の代表者である被告発人安倍につき、平成27年分、平成28年分、平成29年分、平成30年分及び令和1年分の全ての行為の告発
④晋和会の上記③の収支報告書不記載罪につき、晋和会の代表者である被告発人安倍の会計責任者西山に対する選任監督責任の告発
⑤晋和会の上記③の収支報告書不記載につき、晋和会の代表者である被告発人安倍の重過失責任の告発
であった。
4 後援会の収支報告書3年分の訂正
2020(令和2)年12月23日、後援会の会計責任者阿立は、平成29年分の後援会の収支報告書について「前年からの繰越金額」を3年分の補填額相当額を上積みする形で「訂正」し、平成30年分、令和1年分についても、「前年からの繰越額」を順次、その年の補填額分を取り崩す形にして「訂正」をした。
5 配川だけを後援会の収支報告書不記載罪で起訴、その余は不起訴
上記訂正の翌日、第2次告発のわずか3日後の2020(令和2)年12月24日、東京地検特捜部は、被告発人配川だけを、平成28年分、平成29年分、平成30年分、令和1年分(4年分)の後援会の収支報告書不記載罪で略式起訴し(平成27年分は収支報告書の保管期間が経過しているとして不起訴)、同人は罰金100万円の略式命令を受けたが、それ以外の被告発人と告発事実は、いずれも嫌疑不十分として不起訴とされた。
6 被告発人安倍の記者会見での陳述及び国会での答弁
―原資は「私の預金からおろしたもの」
ところが、配川が略式命令を受けた2020(令和2)年12月24日、被告発人安倍は記者会見において、補填の原資は「私のいわば預金からおろしたもの」であり、ホテルとの交渉やホテルへの支払をしてきたのは「東京の事務所」すなわち晋和会であると述べた。
また、被告発人安倍は、翌12月25日、衆参の議員運営委員会においても、上記記者会見と同様、「私のいわば預金からおろしたもの」との答弁を繰り返した。
さらに、被告発人安倍は、同日の衆議院議員運営委員会において、後援会の収支報告書の訂正の事実を明確に認識した上で、「弁護士が当局の指摘を踏まえて訂正を行っている」、「捜査当局の指導を受けて、このような額に訂正しろということも含めて訂正をしている」と答弁した。
7 検察審査会に対する申立
第2次告発をした法律家は、2021(令和3)年2月2日、検察審査会に対し、不起訴とされた全ての被疑事実につき、起訴相当の議決を求める申立をした。
平成27年分の収支報告書不記載罪につき被告発人配川について起訴相当を求めた申立は、実行行為が2016(平成28)年5月であり、5年の公訴時効が切迫していることから、東京第5検察審査会に係属し、急ぎ審査がなされた。この件は、収支報告書原本の保管期限が経過しているとして不起訴とされたものであったが、2021(令和3)年3月3日、第5検察審査会は、インターネットで公開されている収支報告書により犯罪事実は認められるとして、不起訴不当の議決をした。しかし検察は、再捜査の上、同年4月27日、改めて不起訴処分をした
9 検察審査会の議決(東京第1検察審査会)
2021(令和3)年7月15日、東京第一検察審査会(以下、単に「検察審査会」という)は、被疑者安倍について、公職選挙法違反(後援団体関係寄附)及び政治資金規正法違反(晋和会代表者に対する選任監督責任)の不起訴不当、被疑者配川について公職選挙法違反(後援団体関係寄附)の不起訴不当、被疑者西山について政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)の不起訴不当との議決(以下、東京第一検察審査会の議決を単に「議決」という)を行い、議決要旨が同月30日公表された。
10 検察審査会が晋和会に関する犯罪の不起訴を不当としたことは画期的
桜を見る会前夜祭の問題は、安倍後援会が有権者に対する公職選挙法違反の違法な寄附を行ったことがその本質であり、収支報告書不記載はこれを隠蔽する目的でなされた犯罪であるから、検察審査会が公職選挙法違反の寄附の不起訴を不当としたことは、誠に正鵠を得た判断である。
それととともに、検察審査会が晋和会に着目し、その収支告書不記載及び晋和会の代表者である被告発人安倍の会計責任者に対する選任監督義務違反の不起訴を不当としたことは、画期的である。
前述のとおり、被告発人安倍は、記者会見や国会で、補填の原資は「私のいわば預金からおろしたもの」であり、ホテルとの交渉やホテルへの支払をしてきたのは「東京の事務所」すなわち晋和会であると明確に述べている。収支報告書の訂正内容が真実であるならば、補填の原資についてわざわざ「私の預金」などとは言わず、端的に「後援会の資金」あるいは「後援会の繰越金」であったと述べるはずである。
この意味で、検察当局が、検察審査会の議決を受け、晋和会の収支報告書不記載罪の捜査をするにあたり、「補填の原資」が何だったのか、補填額に相当する金員が具体的にどのような流れで動いたのかは、決定的に重要な事実である。被告発人安倍が述べたとおり「私の預金からおろしたもの」が原資なのだとすれば、後援会の収支報告書における「前年からの繰越額」の増額訂正は、収支報告書の虚偽記載に他ならない。
11 検察審査会の議決を受けての再捜査のためには、後援会の収支報告書の訂正の虚偽性の捜査が不可欠
以上より、検察審査会の議決を受けて検察当局が晋和会の収入・支出に関して再捜査をするにあたっては、後援会の収支報告書訂正の虚偽性が問題となるのは必須であり、後援会の収支報告書の訂正が真実であることを前提とした捜査では、真相究明はおよそ不可能である。
よって、検察当局の厳正な捜査を求め、私たちは第3次告発に至ったものである。
第4 告発事実の犯罪性
―後援会収支報告書訂正の虚偽性、驚くべき辻褄合わせ
1 「収入」・「支出」欄の加筆訂正
2020(令和2)年12月23日、後援会会計責任者である被告発人阿立は、平成29年分、平成30年分及び令和1年分の後援会の収支報告書の「収入」及び「支出」欄を次のとおり加筆訂正した。
①「収入」(加筆)―「機関誌紙の発行その他の事業による収入」として
平成29年分:「平成29年安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭2,410,000」
平成30年分:「平成30年安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭3,035,000」
令和1年分:「平成31年安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭 3,835,000」
これらは、前夜祭会場で参加者から徴収した1人5000円の参加費の合計額である。国会で被告発人安倍は、参加者が直接ホテルに支払ったので後援会に収入はないと繰り返し答弁していたが、捜査の結果、これらが後援会の収入であったことを認めたのである。
②「支出」(加筆)―「政治活動費の内訳」として
・「宴会料等 2,410,000 H29/4/14 ㈱ニュー・オータニ…参加費
・「宴会料等 1,901,056 H29/4/17 ㈱ニュー・オータニ…補填額
※ 以上合計 4,311,056円
平成30年分:
・「宴会料等 3,035,000 H30/4/20 ㈱ニュー・オータニ…参加費
・「宴会料等 1,506,365 H30/4/26 ㈱ニュー・オータニ…補填額
※ 以上合計 4,541,365円
令和1年分:
・「宴会料等 3,835,000 H31/4/12 ㈱ニュー・オータニ…参加費
・「宴会料等 2,604,908 H31/4/19 ㈱ニュー・オータニ…補填額
※ 以上合計 6,439,908円
これらは、前夜祭の「宴会料」として後援会からホテルに支払った金額であり、各年とも日付を異にして金額が書き分けられている。
上段は、会場で参加者から徴収した金額と同一であり、支払日も「前夜祭」の開催日と同一である。
そして、下段の、毎年開催日の数日後に支払った金額こそが、被告発人安倍が認めた宴会の「補填額」つまり「寄附」の額である。
それでは、この支出された「補填額」に相当する収入はどのように記載されたのか。
2 虚偽記入の事実=犯罪事実
―「前年からの繰越額」を3年分増額して補填分の「収入」とした
驚くべきことに、補填額相当分は、全て収支報告書の冒頭にある「収支の総括表」の中の「前年からの繰越金」を、平成29年分報告書においては補填額の3年分、平成30年分報告書においては補填額の2年分、令和1年分の報告書においては補填額の1年分、それぞれ増額させる形で「収入」として処理し、令和1年において増加させた補填額を使い切って0円にしているのである。帳尻は、1円も狂わずぴったり合っている。
収支報告書の訂正は、保管期限が経過していない過去3年分についてのみなされた。訂正された「収入」の増加額を、新しい方から遡って詳しく見ると、以下のとおりである(分かりやすくするため、収支報告書のうち、当該訂正箇所のみ3年分、末尾に添付した)。
2019(平成31・令和1)年分
1 2019年分補填額(支出訂正額)2,604,908円
2 収入総額のうち、「前年からの繰越額」
⑴
訂正前の金額 10,029,276円(A)
⑵
加算額(補填額) 2,604,908円(B)
⑶
訂正後の金額 12,634,184円(A+B)
1 補填額(支出訂正額)
①
2019年分補填額 2,604,908円
②
2018年分補填額 1,506,365円
③
補填額合計 4,111,273円
2 収入総額のうち、「前年からの繰越額」
⑴ 訂正前の金額 7,773,479円(A)
⑵ 加算額(補填額合計)
4,111,273円(B)
⑶ 訂正後の金額 11,884,752円(A+B)
2017(平成29)年分
1 補填額(支出訂正額)
① 2019年分補填額 2,604,908円
② 2018年分補填額 1,506,365円
③ 2017年分補填額 1,901,056円
④ 補填額合計 6,012,329円
2 収入総額のうち、「前年からの繰越額」
⑴ 訂正前の金額 7,240,705円(A)
⑵ 加算額(補填額合計) 6,012,329円(B)
⑶ 訂正後の金額
13,253,034円(A+B)
要するに、毎年のホテルへの支払額から参加費の合計額を差し引いた補填額を、全てありもしなかった「前年からの繰越金」で処理し、「3年分遡って帳尻を合わせればよい」とばかりに、補填額3年分を平成29年分に積み、3年をかけてそれを順次、使い切るという「訂正」で処理しているのである。これすなわち、虚偽記入という犯罪事実である。
何という辻褄合わせ、帳尻合わせであろうか。そもそも存在しなかった「繰越金」を計上し、「3年分の辻褄が合えばよい」と形だけを整えて、補填分(つまり寄附に使った金)の原資を隠蔽しているという他ない。
仮にこうした訂正が虚偽でないというためには、歴年の後援会の収支報告書には記載されていなかった繰越金相当額の資金が、現実には後援会に存在したことが証明されなければならない。しかも、翌年、翌々年の「前夜祭」でいくらホテルに補填するかを見越したかのように1円の狂いもない3年分の補填額の合計額が平成29年に「前年からの繰越金」として、現金として存在していたことが証明されなければならない。そのような証明はおよそ不可能であろう。
これが、「虚偽の記入」(政治資金規正法25条1項3号)の実態である。
3 被告発人安倍の虚偽記入についての故意
前述のとおり、2020(令和2)年12月24日の記者会見及び同月25日の国会答弁において、被告発人安倍は、補填分の原資は「私のいわば預金」であり、「東京の事務所」から支払ったと述べ、決して、「原資は後援会の資金」とは述べていない。
そして、被告発人安倍は、同月25日、国会で、後援会の収支報告書の訂正につき、「弁護士が当局の指摘を踏まえて訂正を行っている」、「捜査当局の指導を受けて、このような額に訂正しろということも含めて訂正をしている」と答弁している。
以上の被告発人安倍の供述は、真実は補填の原資が後援会の繰越金ではないことを知りながら、後援会の収支報告書における前年度からの繰越金を増額訂正するという虚偽記入を認識していたこと、すなわち被告発人安倍に故意があったことを明白に裏付けるものである。
しかも被告発人安倍は、虚偽記入について、「捜査当局の指導」であったなどと検察に責任を転嫁しており、情状も悪質である。
以上により、被告発人安倍には、収支報告書の虚偽記入罪について故意があり、後援会の代表者配川及び会計責任者阿立を指導する立場で、これらの者と共謀して、虚偽記入を実行したものである。
第5 配川の起訴状と収支報告書訂正内容の齟齬
細かい点であるが、後援会の収支報告書不記載の罪で起訴された被告発人配川に対する起訴状に記載された各年の支出額(補填額)と、収支報告書で加筆訂正された支出額(補填額)は、以下のとおり、金額に齟齬がある。
平成29年分 起訴状 1,860,860円
収支報告書 1,901,056円
平成30年分 起訴状 1,449,700円
収支報告書 1,506,365円
令和1年分 起訴状 2,507,732円
収支報告書 2,604,908円
この齟齬が何を意味するのかは不明であるが、虚偽記入が「捜査当局の指導」だったとの被告発人安倍の答弁の虚偽性を裏付ける可能性もあるので指摘しておく。
第6 検察審査会の議決について
東京第一検察審査会の議決は、桜を見る会前夜祭に関する告発内容、事実関係を丁寧に審査し、真っ当な市民の見解を、以下のとおり、説得力をもって書き込んでいる。検察は、そこに籠められた市民の思いを真摯に受け止めてほしい。
以下、議決の中からいくつかの記述を指摘する。
⑴ メール等の客観的資料も入手して被疑者安倍の犯意を確定すべき
議決は、検察が不起訴とした寄附に関する被疑者安倍の犯意について、「不足額の発生や支払等について、秘書らと被疑者安倍の供述だけでなく、メール等の客観的資料も入手した上で、被疑者安倍の犯意の有無を確定すべきである。」、「十分な捜査を尽くした上でこれを肯定する十分な証拠がないとは言いがたく、不起訴処分の判断には納得がいかない。」として、被疑者安倍及び被疑者配川の不起訴処分を不当としている。
本件告発事実に関しても、全く同様のことが言える。
⑵ 晋和会による支払について捜査が尽くされていない
また、議決は、晋和会の収支報告書不記載についても、「前夜祭の開催には、被疑者西山が主体的、実質的に関与していたと認められるから、…慎重な捜査が行われなければならない。」、「晋和会の資金による支払があったかどうかについて、十分な捜査が尽くされているとは言いがたいため、不起訴処分の判断には納得がいかず、被疑者西山の不起訴処分は不当である。」としている。
本告発はまさに、晋和会を巡る資金の流れについて捜査を尽くすために、後援会の訂正された収支報告書の虚偽性についても疑いをもって捜査することを期待するものである。
⑶ 招待されるべき資格のない後援会員が招待された「桜を見る会」
検察審査会の議決は、最後の付言においても、極めて重要な指摘をしている。
まず、「前夜祭」だけでなく「桜を見る会」そのものについても言及し、「税金を使用した公的な行事であるにもかかわらず、本来招待されるべき資格のない後援会の人達が多数参加している」とし、「今後は、候補者の選定に当たっては、…選定基準に則って厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい。」と述べている。
告発にかかる「前夜祭」が、そもそも「桜を見る会」に違法に招待された後援会員の宴会だったという核心を突いている。
⑷ 透明性のある政治資金の管理を
また、前夜祭の費用の補填につき、「そういった経費を政治家の資産から補てんするのであれば、その原資についても明確にしておく必要があると思われ、…証拠書類を保存し、透明性のある資金管理を行ってもらいたい。」と述べている。まさに、政治資金規正法の立法趣旨に直結する問題である。
被告発人安倍は、補填分の原資につき、「私のいわば預金」と繰り返し述べているが、「預金」の原資は、第二次以降の安倍内閣が使った総計95億4000万円の「官房機密費」のうち領収証の不要な「政策推進費」86億9000万円だったのではないかとの指摘が、学者や市民団体によってなされている。捜査を尽くすことによって、こうした問題も徹底的に解明されるべきである。
⑸ 総理大臣であった者は説明責任を果たせ
議決は最後に、次のように被告発人安倍を痛烈に批判している。
「政治家はもとより総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表者である自覚を持ち、清廉潔白な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきであると考える」。
これは、被告発人安倍が、国会で事実と異なる答弁を118回も行ったという衆議院調査局の調査結果まで公表される中にあって、大多数の国民の声を代弁する批判である。
捜査当局は、こうした国民の声に応え、改めて被告発人安倍に対する厳正な捜査を行ってほしい。
ちなみに、唯一有罪とされた被告発人配川は、公設秘書を辞職したものの、いまだに私設秘書として「安倍事務所」への勤務を続けている。この事実は、「自分が知らない間に秘書がやった」との被告発人安倍の供述の虚偽性を、雄弁に裏付けるものであろう。
第7 最後に
自民党総裁選及び総選挙を間近に控える今、被告発人安倍は、自身の行為が検察審査会によって不起訴不当との議決を受け、いまだに「被疑者」であることを全く意に介さないかのように、政界に強い影響力を行使しようとしている。
しかし国民の中では、これまでにないほどの政治不信が高まっている。こうした中、東京地検特捜部が政治権力に忖度せず、公正かつ厳正な再捜査を行うことを、国民は期待し、注目している。
とりわけ、本告発(第三次告発)は、第一次告発及び第二次告発とは異なり、補填の「原資」に迫る内容となっていることからも、極めて重要な意味を持つ。そして、上述したように、被告発人安倍が、本告発の事実(上記「第2」)である後援会の収支報告書の訂正について、「弁護士が当局の指摘を踏まえて訂正を行っている」、「捜査当局の指導を受けて、このような額に訂正しろということも含めて訂正をしている」と答弁していることを踏まえれば、検察の政治権力への忖度にとどまらず、検察が政治権力と癒着して補填の「原資」隠ぺいを図ったのではないかとの疑念も存在するのである。このような疑念を晴らすためにも、東京地検特捜部には強制捜査を含む徹底した捜査を行うことが求められているのである。
昨年、検察庁法改正法案が、圧倒的多数の国民の反対により廃案になったのも、国民の検察に対する期待の表れである。そのことも改めて想起し、東京地検特捜部は、国民の期待と信頼に応えてほしい。
以上