Monday, April 15, 2013

ヘイト・クライム禁止法(8)

オーストラリアは英米法圏であり、人種差別撤廃条約第4条(a)の適用を留保している。このため憲法学の論文では「オーストラリアにはヘイト・スピーチ規制法はない」と指摘されてきた。その通りだが、もう少し丁寧に見る必要がある。                                                      オーストラリア政府が人種差別撤廃委員会に提出した第15~17回政府報告書によると(CERD/C/AUS/15-17. 2 June 2010.)、2004年法律2号はテレコミュニケーション犯罪に関する改正法で、故意に脅迫、嫌がらせ、攻撃といった方法でインターネット搬送サービスを利用することを犯罪とした。2007七年市民権法改正によって、市民権の得喪に関連する非差別原則を導入した。                                                                       以上はオーストラリア連邦の話だが、州ごとに事情が異なる。                                                               ヴィクトリア州では、2006年に人権章典ができ、2007年1月1日に施行された。国際自由権規約にならった内容で、先住民族の個人的権利と集団的権利を認めている。人種に基づく差別からの自由も盛り込まれている。2004年の多文化ヴィクトリア法によって社会各層に多文化主義が導入され、2001年の人種的宗教的寛容法が人種的宗教的中傷を禁止している。1995年平等機会法の再検討により、ヴィクトリア人権章典を検討中である。                                                                                         西オーストラリア州では、2007年に人権法が提案されている。2004年の刑法改正法により、人種的中傷の犯罪規定が改正された。2段階の犯罪構造の適用(複合犯罪)がなされている。もっとも重大な犯罪に最大14年までの重罰化がなされた。言論の自由の保障を確認する一方、暴行脅迫などの犯罪について「人種」的動機を刑罰加重事由にした。2006年の平等機会改正法は「人種に基づいて攻撃する行動」を違法とした。「人種に基づいて攻撃する行動」とは、人種、又はその人種に関係する特徴やその人種に帰せられる特徴に基づいて、その人の親戚や団体帰属について、プライヴェートな場合以外で、侮蔑、侮辱、屈辱又は脅迫するような行動を行うことである。