Thursday, April 18, 2013

ヘイト・クライム禁止法(11)

フランス政府が人種差別撤廃委員会に提出した第17~19回政府報告書(CERD/C/FRA/17-19. 22 July 2010.)によると、フランスにはいくつかの人種差別行為処罰規定がある。ヘイト・クライム禁止法は、従来は公開の差別煽動を処罰してきたが、2005年3月25日の法律2005-284号によって刑法が改正され、公開ではない中傷、侮辱、差別的性質の教唆を犯罪とし、地方裁判所と地区裁判所の管轄としたことである。                                                                                 刑法第六二四-三条は「その人の出身、又は特定の民族集団、国民、人種又は宗教の構成員であるか構成員でない――現にそうであれ、そう考えられたものであれ――ことに基づいて、人又は集団に公開ではない中傷をすれば、第四カテゴリーの犯罪に設定された罰金を課す。ジェンダー、性的志向、障害に基づく公開ではない中傷も同じ刑罰を課す」と規定する。                                                                         刑法第六二四-四条は「その人の出身、又は特定の民族集団、国民、人種又は宗教の構成員であるか構成員でない――現にそうであれ、そう考えられたものであれ――ことに基づいて、人又は集団に公開ではない侮辱をすれば、第四カテゴリーの犯罪に設定された罰金を課す。ジェンダー、性的志向、障害に基づく公開ではない侮辱も同じ刑罰を課す」と規定する。                                                                                 この規定の最大の特徴は、言うまでもなく、「公開でない」中傷、侮辱に刑罰を課していることである。他の国ではあまり類例のない、相当議論になる規定である。実際にどのように適用されているかはわからない。公開でない発言なので、他に人がいない場で、AがBに向かって差別発言をして、録音などの証拠が残っていれば、犯罪が成立することになるのだろうか。あるいは、少数ながらも居合わせて差別発言を聞いた証人が必要なのだろうか。                                                                                 フランスには、「アウシュヴィッツの嘘」罪もある。これは後日、また別に紹介することにする。                                                                                              さらに、1936年1月10日の法律は、その出身、又は特定の民族集団、国民、人種又は宗教の構成員であるか構成員でないことに基づいて、人又は集団に対する差別、憎悪、暴力を教唆したことにより訴えられた、又は同じ差別、憎悪、暴力を正当化する考えや理論を広めたと訴えられた結社、又は事実上の団体に解散を命じる権限を大統領に与えている。この規定により、2000年以後、3つの団体が解散命令を受けた。Unite Radicale(2002年8月6日)、Elsass Korps (2005年5月19日)、Tribu Ka (2006年7月28日)である。                                                                           1949年7月16日の法律第14条は、青年向けの出版物に関する1987年法律によって改正され、18歳未満の者に提供、贈与、販売されるための出版物が、人種差別や憎悪を含んでいるために、青年にとって危険な場合、出版を禁止する命令権限を内務大臣に与えている。大臣命令によって公開展示や広告も禁止される。2000年以後、この命令が出されたことはない。