Saturday, January 25, 2014
国際原子力マフィアを追跡する
コリン・コバヤシ『国際原子力ロビーの犯罪――チェルノブイリから福島へ』(以文社)
フランス在住の美術家・著述家による、フランスを中心とした原子力ムラ(原子力ロビー)の犯罪の実態を解明する本である。著者は1970年代から核と原子力の問題に関心を持ち、『はんげんぱつ新聞』『原子力資料情報室通信』に寄稿してきた。
本書では、3.11以後の福島に、なぜ健康に関する国際機関WHOではなく、国際原子力機関IAEAがやってきたのかと問いを立て、IAEAとWHOの関係を端緒にしながら、チェルノブイリの核被害を過小評価し実態調査を阻んできた国際原子力マフィアが福島で同じ犯罪を積み重ねようとしている危険性を指弾している。
第1章「国際原子力ロビーとはなにか」ではIAEA、WHO、ICRPなどによる支配体制を明るみに出す。第2章「エートス・プロジェクトの実相から」では、プロジェクトの概要を紹介し、福島で行われたダイアログ・セミナーの正体を示して、責任者の不在、過剰なる自己責任論、選択肢の不在を批判する。
ここまでが本論だが、著者は第3章「内部被曝問題をめぐるいくつかの証言から」において、IAEA支配=国際原子力マフィアと闘ってきた科学者たちを紹介する。ワシリー・ネステレンコ、ユーリ・バンダジェフスキー、ガリーナ・バンダジェフスカヤ、アレクセイ・ヤブロコフである。日本で言えば高木仁三郎や熊取6人衆にあたるだろうか。ネステレンコらの証言を伝えることにより、国際原子力マフィアの支配の実相がより鮮明に浮かび上がるとともに、国際原子力マフィアとの闘いの展望が可能になる。
末尾の資料に「放射能防護関連を中心とする国際原子力ロビー 人脈と構造図」が掲載されている。「放射能防護関連を中心とする」という限定がついているが、その世界的広がりがよくわかる。原発燃料の採掘・精製、原発メーカー、原発製造と工事請負企業、御用学者など、国際原子力マフィアの巨大さは想像を絶する。実証科学と想像力の両方を駆使しながら、本書を読むことが必要である。