Saturday, January 04, 2014
『光の賛歌 印象派展』
美術家よりも一般に人気の印象派の展覧会は何度も何度も開催されてきたし、フランスやスイスでもかなり観たつもりだが、まだまだ観ていないものがある。東京富士美術館で開催された『光の賛歌 印象派展――パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅』でも初めて見る作品が多数あった。「光の賛歌」というタイトルが付されているとおり、アカデミーの絵画作品と違って、目に映る光の印象をそのままキャンバスに描き出す印象派の技法によって、水(川、海、池)や青空のとらえ方が大きく変化した。その変化の様子を確認させるのが本展だ。展示は3章構成。序章「印象派の先駆者たち」では、17世紀オランダ風景画のホイエン、ライスダール、イギリス・ロマン主義のターナー、フランス・ロマン主義のドラクロワ、レアリスムのクールベ、そしてバルビゾン派のルソー、トロワイヨン。クールベの「エトルタ海岸、夕日」は、同じエトルタを描いたモネやブーダンと比較できておもしろい。第1章「セーヌ河畔の憩い」では、シスレーが15点、モネも15点、さらにピサロ、マネ、モリゾ、シニャック、ルノワール、ロワゾー等。第2章「ノルマンディ海岸の陽光」では、モネ、ピサロのほかに、ブーダン、ヨンキント、モーフラ、カイユボット、セザンヌ。ノルマンディの現場は行ったことがないが、想像するのが楽しい。マネの「散歩」やルノワールの「ブージヴァルのダンス」だけ人物画で、他はほとんどすべて風景画だ。世界各地から集められた80点はなかなか壮観だった。各作品に100字ほどの解説が付されているのが、親切と言えば親切だが、多くの客がその場で解説を読み、作品はちらっと見る程度で歩いているのがよくわかる。何を見に来たのだろうと不思議に思う。解説は事前か、事後に読めばいいのに。三浦篤(東京大学教授)らが作成したカタログはコンパクトでよくまとまっている。作品解説もていねいだ。他方、美術館の学芸員が会場で声高に解説をしていたのも、サービスと言えばサービスだが、時に耳障りだ。ただでさえ正月休みで家族連れ、子ども連れが多く、赤ちゃんがビービー泣いていることさえある。静かに鑑賞したい客を相手にしない美術館なのかと考え込んでしまう。