Monday, January 06, 2014
ブラック企業にたかる「ビジネス」批判
今野晴貴『ブラック企業ビジネス』(朝日新書)――――ベストセラー『ブラック企業』(文春新書)の著者による最新刊。前著で解明したブラック企業論を前提として、本書では、ブラック企業にたかってビジネスを展開し、ブラック企業を支え、従って若者を使い潰すことに協力している弁護士、社会保険労務士などの士業を中心に「ブラック企業ビジネス」の実態を暴いている。また、子どもがブラック企業の被害を受けていることに気付かずにブラック企業に勤務し続けるように説得してしまう親、診断に来た若者に自分の責任であると思わせてしまう医師、ブラック企業にどんどん学生を就職させている学校などを取り上げて、具体的に批判している。ブラック企業を辞めようとする社員に対して1億円の損害賠償を請求して嫌がらせをする弁護士、法的には無意味な主張を唱え、不必要な書類を執拗に送り続けて、相手を疲れさせ、諦めさせようとする弁護士など、その実体は呆れるほど低レベルだが、そうした弁護士が増えている。その原因は、一方ではブラック企業の登場によって、それがビジネスとなり、ビジネスのためなら弁護士倫理など放棄してしまう弁護士がいることであるが、他方では司法改革によって弁護士を増員したのに、仕事は減っているため、若手弁護士に仕事がなく、弁護士として修練を積むこともできないため、手軽な金儲けとしてブラック企業ビジネスに取り込まれていくと言う。第3章「私もワタミ・ユニクロの弁護士から『脅し』を受けた!」では、著書『ブラック企業』に対して、ユニクロから「虚偽の事実」「名誉毀損」との「通告書」が届き、ワタミからも「通告書」が届いた。大企業が、大学院生である著者に対して脅迫状を送りつけたのだ。嫌がらせ訴訟(SLAPP訴訟)の予告と言ってよいだろう。これに対して、著者は、具体的事実を列挙して説得力のある反論をしている。ユニクロの柳井、ワタミの渡辺の発言を具体的に引用して鮮やかに批判し、SLAPP訴訟への対応についても研究している。本書の最後に、著者はブラック企業とブラック企業ビジネスがはびこる社会をアリジゴク社会と命名し、アリジゴク社会を乗り越えるために、まず個人が戦略的に思考して、不条理と闘うことを手掛かりとし、さらに本当の専門家集団を作ること、ブラック企業対策プロジェクトを発足させることなどを提言している。専門家集団としては、これまでも日本労働弁護団、過労死弁護団が活躍してきたが、2013年7月、ブラック企業対策弁護団が結成された。著者の闘いが日本を変え始めた。