核をめぐる数々の欺瞞を暴く
木村朗・高橋博子編著『核時代の神話と虚像――原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(明石書店、2015年)
<広島・長崎へ原爆が投下されてから70年。その後も第五福竜丸事故、3.11福島第一原発事故、そして劣化ウラン兵器などにより、国内外で被ばく者は増加を続けている。戦後の核問題について深い洞察を続けてきた第一人者らが、核の平和利用と軍事利用の密接な結節点を指摘し、核をめぐる欺 瞞を撃つ。戦争と核のない世界を希求する言霊。>
第1章 核時代の幕開けの意味を問い直す――忍び寄るグローバルヒバクシャの影[木村朗]
第2章 軍事・防衛研究としての放射線人体影響研究――第二次世界大戦・冷戦・対テロ戦争[高橋博子]
第3章 核兵器と原発で歪められた放射線被曝の研究[沢田昭二]
第4章 占領期における原爆・原子力言説と検閲[加藤哲郎]
第5章 住民はなぜ被曝させられたのか――広島・長崎からマーシャル諸島へ[竹峰誠一郎]
第6章 「原子力の平和利用」の真相――原発導入の背景と隠された米国の意図[戸田清]
第7章 掣肘受けざるべく――核燃料サイクル計画の裏に潜む闇[藤田祐幸]
第8章 原子力と平和――福島第一原子力発電所事故と原子力の内実[小出裕章]
第9章 原子力政策空回りの時代[吉岡斉]
第10章 劣化ウランの兵器転用がもたらすもの[山崎久隆]
第11章 アメリカ新核戦略と日本の選択――核兵器をめぐる現状と課題[湯浅一郎]
第12章 朝鮮半島における「核問題」と朝鮮人被爆者に関する歴史の一考察[李昤京]
第13章 軍事攻撃されたら福島の原発はどうなるか――「平和を欲すれば軍事力・軍事同盟を強化せよ」論の落とし穴[藤岡惇]
第14章 核軍縮と非核兵器地帯――北東アジア非核兵器地帯構想を中心に[中村桂子]
第15章 日米〈核〉同盟――その軌跡と隠された真実[太田昌克]
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目次を一瞥するだけで本書の凄さがわかる。しかも、上記の15本の論文に加えて、コラムが15本。充実の1冊だ。原爆と原発の両輪によって構築された現代日本の核体制が正面に掲げてきたおびただしい神話と虚像を徹底解剖し、歴史の闇を明るみにだし、現在の虚妄を撃つ。どこから読んでも発見 の連続だ。著者はいずれも理論と実践の現場で闘い続けてきたつわものたちだ。平和運動、反核運動、脱原発運動、それらの一翼を担ってきた裁判闘争、情報戦、あらゆる場面に著者たちの姿があったし、いまも、ある。研究者にして運動家、歴史家にして闘士――真実を求める闘いと人権を求める闘いが見事に融合し、鍛えられている。