Wednesday, September 09, 2015

ヘイト・スピーチ研究文献(37)北海道新聞・月曜討論

「月曜討論 ヘイトスピーチ規制法は必要か」『北海道新聞』2015年9月7日
「万能ではなく副作用も」尾崎一郎
「刑事罰と教育 包括的に」前田朗
尾崎一郎さん(北大大学院教授)と私の意見を左右に並べて、読者が読み比べる形式である。

「札幌西高卒」の私は、法規制必要論、というよりも法規制必須不可欠論だ。「日本は1995年に国連の人種差別撤廃条約を批准しており、今回の法案は本来ならば20年前に作るべきだった」とし、「ヘイトスピーチは人間の尊厳を侵害する実害行為であり、犯罪であると捉えるのが世界の常識です」とし、「ヘイトスピーチの規制が、真の表現の自由を守ることにつながると思っています。/さらに言えば、マイノリティー(少数派)の表現の自由こそが重要なのです」とし、「教育も刑事罰も行政指導も必要なのです。人種差別に対して包括的に対処する必要があるのです」と述べている。
尾崎さんは、冒頭で「法的対応が必要なことは明らかです」としているが、次に「しかし、法規制は万能ではないことも理解しておく必要があります」と述べ、さらに「万能でない法規制には、思わぬ副作用が伴うことにも注意する必要があります」とし、「規制すればするほど、加害者の思うつぼになりかねない」とし、最後に「ヘイトスピーチを正面から規制するのではなく、いわば少し横にそらして何とか無効化する方法はないかと研究しています」と述べている。
というわけで、尾崎さんと私とでは、意見は異なるようで同じであり、同じようで異なる。「法規制は万能ではない」、そのとおりである。万能だと主張している人はどこにもいない。「副作用が伴う」、そのとおりである。副作用のない法律はない。「加害者の思うつぼになりかねない」、そのとおりである。それでも被害者の救済と権利保障が不可欠である。法規制よりも、「少し横にそらして何とか無効化する方法はないかと研究しています」、ヘイトスピーチを無効化するというのは重要な研究なので期待したい。で、それはいつごろ成果を上げる研究なのだろう。100年後だろうか、200年後だろうか。