Thursday, March 05, 2020

ますます進む社会の分断


橘玲『上級国民/下級国民』(小学館新書)

成田空港の書店で購入し、飛行機の中で読んだ。初めて知る著者だが、国際金融小説を書く作家で、同時に金融・人生設計に関する著作も多いという。池袋でおきた自動車暴走事故によって2人が亡くなったのに、運転したのが元高級官僚で、逮捕されなかったことから、「上級国民」なる言葉が生まれた。実際には高齢であり、自身が骨折していたために逮捕されなかったようだが、前後に似たようなケースもあったことから、「上級国民/下級国民」という言葉が使われるようになったという。

本書は、バブル崩壊後の平成の労働市場がどのように分断を強化したのかを示す。「雇用破壊」とか、日本型雇用の変質が指摘されたが、実は「正社員の雇用は全体として守られた」という。守られたのは団塊の世代である。そのあおりで就職できなかったのが団塊ジュニア世代というから、ややこしい。次に起きるのは「働き方改革」の進行と、年金制度をめぐる対抗のようだ。続いて、「モテ」と「非モテ」の分断に焦点が当てられる。社会の分断によって生み出されたアンダークラスには浮上のチャンスがきわめて乏しい。そもそも教育の本質は「格差拡大装置」なので、教育による格差是正は期待できないという。最後に、リベラル化する世界では「人口爆発」と「ゆたかさの爆発」の先に、人生の自由な選択と設計が実現しており、「リスク」を自分で引き受けなければならない。知識社会の憂鬱が語られる。

数千年単位でのマクロの話と、数十年単位のミクロの変化を強引につなげて話を進めるなど、説得力に欠けるが、案外、すんなり読める。読者を引き込む文章はさすが作家と言える。統計の読み方も独特であり、ウケる新書の書き方はお得意のようだ。