テンダイ・アチウメ人種主義問題特別報告者の報告書(A/HRC/48/77. 13 September 2021)には、前回まで紹介した30カ国に加えて、EUの状況が紹介されている。
EUは新型コロナ危機が差別や不寛容を加速させていることに注目している。オンライン上の不寛容と人種主義に関心があり、ソーシャル・メディア・プラットフォームがいかに憎悪メッセージの宣伝に用いられているかを調査している。ムスリム、移住者、ユダヤ人がオンラインのヘイト・スピーチの被害を受けている。
2016年にオンラインのヘイト・スピーチに対処する行動綱領について、主要なソーシャル・メディア企業(フェイスブック、ツイッター、ユーチューブ等)と協定を結んだ。
2020年9月18日、「反人種主義行動計画2020-25」を策定した。
2020年10月19日、欧州委員会は、反ユダヤ主義と闘う包括的戦略の策定を公表し、反ユダヤ主義の暴力やヘイト・クライムが増えている各国を支援している。
2020年12月2日、EU評議会は反ユダヤ主義と闘う宣言を採択し、作業部会を設置した。
続いて、アチウメ人種主義問題特別報告者は、「適用可能な人種平等枠組み」として、国際人権法を確認する。
第1に、人種差別撤廃条約第1条。
第2に人種差別撤廃条約と国際自由権規約の差別の煽動禁止規定。
第3に人種差別撤廃条約第2条の差別の禁止、第6条の被害者救済。
第4に人種差別撤廃条約第4条のヘイト・スピーチの禁止。
第5に国際自由権規約第20条と自由権規約員会の解釈。
第6に人種差別撤廃委員会の一般的勧告第35号。
第7にダーバン宣言パラグラフ84、85、94。
(以上はすべて日本でも知られている。)
最後にアチウメ人種主義問題特別報告者は、結論と勧告をまとめている。
・各国は、国際人権基準に合致した反ユダヤ主義と闘う具体的行動計画を策定すること。
・各国は、人種差別撤廃条約第4条の義務に完全に従うこと、条約第4条に対する留保を撤回すること。
・各国は、ダーバン宣言と行動計画を完全かつ効果的に施行する措置を取ること。
・各国は、人種差別撤廃委員会の諸勧告を履行すること。
・人種主義・排外主義。反ユダヤ主義犯罪の統計を取ることは重要である。実行者の動機、被害者の特定などヘイト・クライムの情報を収集し、それと闘う措置を設計すること。
・人種主義と闘うためには包括的な枠組みが不可欠である。市民社会、国際人権機関、地域人権機関、国内人権機関と協力が重要である。
・過去についての真実の説明を促進し、寛容と国際人権原則を促進するため、教育制度の見直しが重要である。
以上。