Thursday, July 13, 2023

ジェンダー暴力の犯罪化03

1章の「女性に対するジェンダーに基づく暴力の定義」

2 平等/差別問題としてのGBVAW

女性差別撤廃委員会CEDAWは女性に対する暴力を差別の一形態と見る。イスタンブール条約の解説書は、女性差別が女性に対する暴力への寛容を生み出すという。女性に対する暴力の予防のために取るべき措置は、男女平等を促進する必要がある。暴力から自由な権利の享受は、各国が男女平等を確保する義務と結びついている。欧州人権裁判所も、女性に対する暴力と性差別の結びつきを認知している。

女性に対する暴力を性差別と結び付けている国は12カ国、フランス、ドイツ、ギリシア、リヒテンシュタイン、マルタ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン、イギリス。結びつきを示していないのが11か国、ベルギー、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、フィンランド、アイルランド、ラトヴィア、リトアニア、スロヴァキア、スロヴェニアである。

いずれにせよ平等法を制定しているのが23か国。

フランスは2014年、女男平等法を制定し、女性に対する暴力は平等原則違反として制裁を明記した。法律前文で、性暴力は圧倒的に女性に悪影響を与えるとした。判例はハラスメントからの保護と差別の禁止の両方の規範を結び付けている。ノルウェーの平等・反差別法は、社会の全領域をカバーし、家族生活や純粋に個人的関係にも適用され、差別の禁止の中にジェンダー暴力を含め、ハラスメントを禁止している。

イスタンブール条約を批准して、差別と女性に対する暴力の結びつきを認めたのはドイツ、ギリシア、マルタ、ポーランドである。しかし、ドイツの司法権はVAWGBVAWの概念を適用していない。

交差する差別

CEDAW、北京世界女性会議宣言、女性に対する暴力国連特別報告者は、女性に対する暴力の交差性アプローチを強調してきた。CEDAWの一般的勧告第28号と第33号は女性に対する差別の交差性を扱っている。イスタンブール条約は交差性に直接言及していないが、第43項は、性別、ジェンダー、人種、皮膚の色、言語、宗教、政治的意見、国民的社会的出身等に基づく差別に言及している。女性に対する差別の複合的形態が予防されなければならない。

15か国の国内法は差別の交差性を認知していない。ベルギー、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、イタリア、ラトヴィア、リヒテンシュタイン、マルタ、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、イギリスである。

ギリシアのジェンダー平等法は複合的差別に言及している。ポーランドの法律は交差性を定義していないが、ポーランドのオンブズパーソンは女性に対する暴力を扱う際に、高齢女性、障害女性、移住女性に着目している。ブルガリアでは、法律では交差性に言及がないが、女男平等国内計画が民族的出身、移住等に言及している。

交差性への言及の有無にかかわらず、ノルウェー、フランス、オランダ、ドイツはそれぞれ実質的に交差性を考慮している。