Wednesday, October 23, 2013
自由権規約委員会の新しい審議方式
23日、パレ・ウィルソンで開催された、「市民的政治的権利に関する国際規約」に基づく人権委員会(Human Rights Committee、自由権規約委員会)は、ウルグアイ政府第5回報告書(CCPR/C/URY/5)の審議を行ったが、その際、従来と異なる、新しい方式を採用した。新しい審理方式を、岩沢委員はlist of issues firstと呼び、他の数人の委員はlist of issues priorityと呼んだ。「リスト・オブ・イッシュー優先方式」である。リスト・オブ・イッシューLOIとは、政府報告書が提出された後、人権委員会委員が当該政府に対して特に重視して質問する事項をまとめた文書であり、実際の審議の際にもLOIを中心に質疑応答が行われてきた。とはいえ、政府報告書、NGO報告書、LOIなどのやり取りの手間がかかり、文書が増える一方であった。文書は翻訳しなければならないので、その手間と経費もかかる。そこで手続きの簡素化と経費節減が求められ、合理化したのが新しい「リスト・オブ・イッシュー優先方式」である。すべての国に適用されるのではなく、国家の側が選択できることになっていて、ウルグアイ政府が初めて選択した。22日までのモザンビークなどは旧式で審議が行われ、23日のウルグアイが初めて新方式であった。ウルグアイ政府報告書は、LOIごとに政府の回答を記載している。23日の審議でも、各委員は、「LOIの5番と6番と10番について質問します」という具合に、LOIを中心に質問した。岩沢委員は、この方式が、国連にも委員会にも締約国にも有益である、と説明していた。なるほどと思ったが、一つ抜けている。国連にも委員会にも政府にも有益だが、NGOにとっては有益とは限らない。23日の審議を聞いただけなので、問題点はまだ明らかとはなっていないが、直ちにわかるのは、「LOIに取り上げられなかった事項は、審議の際に取り上げられる可能性がほとんどない」ということであり、したがって、NGOとしては「LOIに取り上げてもらうためにいっそうの努力を傾けなければならなくなる」ということである。つまり、NGOの間で「LOIの椅子取りゲームが熾烈になる」。ウルグアイ政府の審議には、政府から6人ほどが来て、フィデリコ・ペラサ大使らが説明していた。傍聴は30人ほどだが、うち10人が日本人だった。4人は岩沢委員のところの大学院生。残りはNGOだ。ウルグアイは、人身売買、DV、自由を奪われた女性(被拘禁者)、被収容者の健康衛生、マイノリティ保護、難民などを詳しく取り上げた。質疑では、その前に、条約の裁判所による履行・適用があるか否か、国内人権機関とオンブズマンはどうなっているかが重視されていた。また、ICC法が制定されているが、「ICCローマ規程の国内法化」と言えるのか否かも質問が出ていた。夜はJWCHRメンバーで会食。Cornalin,Claudy Clavien, Valais 2012.